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ニュース コラム

【朝晴れエッセー】勇気りんりん・3月25日

 私のカバンにはアンパンマンのマスコットがぶらさがっている。クレーンゲームの戦利品だが子供受けが良く、楽しい。

 大病院を訪れた秋のこと。

 血液検査があり、その場所に行くと「やだー」と泣き声が響いていた。鼻に酸素チューブをつけた2歳くらいの女の子が、右腕をお母さんに押さえられている。看護師さんが採血しようとしているものの、女の子が泣き叫んで動くのでなかなか針を刺せないでいる。

 私はマスコットを持ちながら近づき、「こんにちは。僕、アンパンマン」と声をかけた。お母さんには小声で「私、保育士です」と伝えた。

 「アンパンマン!」。女の子はマスコットを見つめ、泣き止んだ。「頑張ってるんだね。偉いね」と言った瞬間、看護師さんが針を刺した。ハッとして、女の子は腕を見た。でも泣かずにいる。アンパンマンは「強い、強い。大丈夫、大丈夫」と励ました。女の子も「つおい、つおい。だいじょぶ、だいじょぶ」と繰り返し、左手でアンパンマンをぎゅっと握りしめた。

 何度かやり取りして、採血は無事に終わった。「上手だったね。頑張ったから、シールくれるみたいだよ」と言うと、看護師さんが「どれがいいかな」とシールを並べてくれ、女の子の手がアンパンマンから離れた。

 ホッと胸をなでおろしたとき、向こうで私の名前が呼ばれた。採血の順番がきたのだ。それに気づいたお母さんが「アンパンマンにありがとうって言って」と促し、女の子は「アンパンマン、ありがとう」と笑顔を見せてくれた。お母さんは深く頭を下げていた。

 アンパンマンは「どういたしまして」とバイバイをしながら、幸せな気持ちになったのだった。

 山本 俊恵 54 保育士 大阪府八尾市

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