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【直球&曲球】中江有里 あらゆる差別に向き合うには

 先だってハンセン病に関するシンポジウムに参加した。

 大学の卒業論文でハンセン病を患(わずら)った作家、北條民雄を研究して以来、ハンセン病にまつわる差別や偏見を根絶する活動に協力している。

 ハンセン病は古くは聖書、日本書紀にも記された病で、かつては強い感染力がある病と信じられていた。また遺伝するとも思われ、治療法もなかったため、国が主導して施設入所政策を進めた。

 やがてハンセン病の特効薬ができ、実は感染力が弱く、遺伝もしないと分かってからも患者たちは隔離されたままだった。

 差別されたのは患者だけではなく、その家族にも影響は及んだ。今回のシンポジウムは、患者の家族にスポットを当てたものである。私はハンセン病家族国家賠償請求訴訟の原告からのメッセージを壇上から朗読させていただいた。

 原告の一人で現在沖縄に暮らす60代の男性は生まれる前に両親が病を発症し、施設に入所していたという。父は若くして亡くなり、妹と2人で母親の実家で暮らしながら差別と偏見にさらされた過去を語る。自身が娘を持つ親となり、両親が産んでくれたから娘の命もある、この事実は隠すことではないと裁判の原告となることを決意した。

 別の女性の法廷での意見陳述を読ませていただいた。父と兄がハンセン病を患い、家族がバラバラになった悲しみを訴える。

 両方に共通するのは家族の病を恥じたり、隠したりしたくないという思いだ。患者の家族というだけで偏見の目を向けられてきたが、やっと国が政策の誤りを認め、原告たちの積年の願いは届いた。

 ハンセン病の歴史は差別の歴史であり、国籍、人種、病といった自分で選べないものが原因で差別が生まれる。どんな人の中にも、私自身も無意識の中に差別意識があると考えている。

 世に存在するあらゆる差別に向き合うには、自分自身と向き合い、人をおとしめる差別はいけないということを学び続けなければならない。

 人権は誰も等しく持っているのだから。

【プロフィル】中江有里

 なかえ・ゆり 女優・脚本家・作家。昭和48年、大阪府出身。平成元年、芸能界デビュー、多くのテレビドラマ、映画に出演。14年、「納豆ウドン」で「BKラジオドラマ脚本懸賞」最高賞を受賞し、脚本家デビュー。フジテレビ「とくダネ!」に出演中。文化審議会委員。

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