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【思ふことあり】スポーツジャーナリスト・増田明美 冷静で品位ある行動に期待

ドイツ・デュッセルドルフの祭りでは、コロナウイルスをからかう酔っ払いを表現した、グロテスクな山車が登場。品に欠ける?=24日(AP)
ドイツ・デュッセルドルフの祭りでは、コロナウイルスをからかう酔っ払いを表現した、グロテスクな山車が登場。品に欠ける?=24日(AP)

 王冠という言葉が恨めしく思えてくる。王冠=クラウンで、ギリシャ語ではコロナ。形状が王冠に似ていることからその名がつけられたというコロナウイルス。中国・武漢から広がった新型(COVID-19)が、日本にも大きな影響を及ぼしている。

 2月16日には青梅、京都、高知、北九州、熊本、沖縄など、全国各地で1万人規模のマラソン大会が数多く開催された。北九州マラソンにゲストとして招かれた私も、影響はありませんか?と主催者に尋ねると、「こんなときになんで開催するんだという苦情の電話がありましたよ」と。

 アルコール消毒液を会場に配置し、スタッフは全員マスク着用。大会ゲストの宗茂さんと私には「ランナーとのハイタッチは自粛してください」とお達しが。さまざまな感染予防策を講じての開催だった。中国から参加予定の7人のランナーには来年の出走権を付与して辞退していただいたそう。その日、全国各地の大会も同様の対策をして開催したのだと思う。

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 しかし、3月1日の東京マラソンは、一般ランナー約3万8千人の参加中止を発表した。この判断には他の大会と違う事情がある。

 最大の理由は、夏に東京オリンピック・パラリンピックを控えていること。ここで感染拡大を食い止めないと、大会に大きな影響を与えてしまう。

 実際に2月中旬に来日予定だった英国のマーラ・ヤマウチさん(北京オリンピック女子マラソン6位)から来日を延期するメールが届いた。「自分自身の感染には不安はありませんが、これ以上感染が広がると、英国に帰国する際に14日間隔離される可能性もあるので」と事情がつづられていた。

 東京マラソンではスタート時に3万8千人が都庁前の狭い空間に集まる。つまり、数十分間、満員電車並みの混雑の中で多くのランナーがスタートを待つことになるのだ。主催者が感染予防のためにできる限りのことをしたい気持ちは分かる。でも「通勤で毎日1時間以上満員電車に乗っているのに…」とボヤくランナーの気持ちも分かる。

 東京マラソン一般参加中止の決定以降、中止がドミノ倒しのように広がった。福島県いわき市、静岡市など1万人規模の大会が次々に中止を発表。名古屋も一般の部を中止し、エリート選手だけの大会への大幅縮小を決めた。もちろんスポーツだけでなく、コンサートやイベントの中止も相次いでいる。

 参加料の返金問題が取り沙汰されているが、マラソンの場合は募集、申し込み、完走メダル製作、交通規制の告知など、事前の準備段階で多くの費用がかかっているから、納得せざるを得ない。こんなときだからこそ、冷静で品位ある行動が求められると思う。

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 品位といえば、千葉県勝浦市のホテル三日月の対応である。武漢からチャーター便で帰国した邦人を受け入れてくれた。自分のことばかり考えていたらできないことだと思う。

 論語に「義を見てせざるは勇なきなり」(人として当然行うべきことと知りながら、それを実行しないのは勇気がないからだ)という一節があるが、ホテル三日月の勇気には胸が熱くなった。そして、それを優しく見守った勝浦の皆さんにも心を打たれた。私の実家から車で30分。これまでも何度も訪れているが、今度は両親と一緒に泊まって感謝を述べたい。

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