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【風を読む】「言論の自由」求める声を聞け 論説副委員長・佐々木類

中国の習近平国家主席(ロイター)
中国の習近平国家主席(ロイター)

 心配なことがある。中国の清華大学教授、許章潤氏の消息だ。韓国の有力紙、中央日報によると、許氏は今月10日から連絡が途絶えている。

 「これを書き終えてみると、処罰を受けるだろうという予感がする。私の人生で最後の文になりそうだ」

 許氏は今月初旬、インターネット上に公開した文書で、習近平(国家主席の)指導部による新型肺炎への対応を鋭く批判した。感染の実態を隠した公権力による「道徳的腐敗」が人災を招いたとして、「怒りを抱く人民はもはや(政権を)恐れない」と訴えた。処罰への懸念を記したさきの一文は、この文言の最後につづられた。

 一党独裁体制下の中国では共産党や政府への批判は即、身辺の危険につながりかねない。そんな中での言論活動だ。許氏の覚悟はいかばかりか。

 許氏は、習近平国家主席が一昨年3月、終身主席となるための憲法改正を批判したことでも知られる。中国きっての改革派論客だ。1989年の天安門事件の再評価を求めるなど、指導部批判が咎(とが)められて清華大学から停職処分を受けたことがある。

 実名による抗議の声は続く。新型肺炎への警鐘を鳴らしながら、「デマを流した」として当局に処分された湖北省武漢市の李文亮医師が感染して死亡した後、北京大学の張千帆教授ら28人が「言論の圧殺が人災を招いた」などとする公開書簡を発表した。だが、当局はどこ吹く風とばかりに取り締まりを強化し始めているという。

 子曰(いわ)く「千乗(せんじょう)の国を道(みちび)くには事(こと)を敬(けい)して信(しん)、用(よう)を節(せっ)して人を愛し、民(たみ)を使うに時を以(もっ)てす」。

 孔子先生は言う。「大国の政治に必要なのは、事務は丁寧に扱って人民を欺かず、公の金品は節約を心がけて人々の心や生活を豊かにし、人民に労役を提供させるときは、農閑期など時を選びなさい」(「論語」全訳注、加地伸行大阪大名誉教授など)

 習氏は「感染との戦いに勝利する自信と能力が完全にある」と自らを鼓舞している。その前に許氏や張氏らの言葉に耳を傾けたらどうか。国賓として来日し、外交成果を挙げようなどと考えている場合ではなかろう。許氏の無事を祈る。同時に、圧政下で言論の自由を求める声の存在を銘記したい。

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