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【一筆多論】厳格な定年規定の意味 長戸雅子

東京地方検察庁などが入る庁舎=東京都千代田区(川口良介撮影)
東京地方検察庁などが入る庁舎=東京都千代田区(川口良介撮影)

 「なぜこんなことが起きるのだろうか」

 夜空にそびえたつソウル中央地方検察庁の建物を見上げながらため息が出た。

 2014年8月。真夏なのに肌寒かった。その年の韓国は冷夏だった。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)の名誉を傷つけた疑いがあるとして加藤達也産経新聞ソウル支局長(同、在宅起訴後、無罪が確定)が同地検から1回目の聴取を受けていた。

 関係者の一人として現地で対応に当たったが、「大統領案件」として政権と一体になって動く検察にうす気味悪いものを感じた。この過程で韓国では政権が代わると検事総長ら検察幹部がガラリと入れ替わると聞いて驚いた。検察の最大のよりどころであるはずの「中立性・独立性」はそこになかった。

 ソウルから戻って間もなく霞が関の検察庁周辺に所用で出向いた。ほぼ門前払いをされた記憶しかない役所の庁舎が少し好ましく思えた。無謬(むびゅう)とまではいえないかもしれないが、「政治との距離」においては国民の信頼に足る組織と思ったからだ。

 政府は1月末、東京高検の黒川弘務検事長(63)の定年延長を決めた。検察庁法22条では定年を検事総長は65歳、総長以外の検察官は63歳と定めている。黒川氏は2月7日で定年だったが、国家公務員法(国公法)の定年延長規定に基づき、8月7日まで勤務が延長された。

 検察庁法に定めのない検事長の任期延長は過去に例がないが、政府は国公法の「退職により公務の運営に著しい支障が生ずる」と認められる場合に当たるとし、ゴーン事件など「国を挙げた戦い」(検察幹部)を抱える中で「調整力などに優れた黒川氏の手腕が引き続き必要」などと説明した。

 もっとも異例の措置は今夏の退任がささやかれる稲田伸夫検事総長の後任に黒川氏をすえるためのものとされており、これが事実なら政府が「検察トップの人事に介入した」といえる前例をつくることになる。

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