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【朝晴れエッセー】手紙・2月15日

 父の末妹とは5歳まで一緒に暮らした。彼女は、大阪の調理師学校で助手をしたのち、29歳で嫁ぐ。口八丁手八丁を地でゆく、圧倒的な話術と行動力の持ち主だ。

 後年、結婚相手を紹介すると、姪(めい)である私の名の由来から結婚しないのかとやきもきしたことまで、私の37年間の人生を語り尽くした。主人は実にうれしそうに聞き入りながらも、そのテンポの速さに「あ」と「はい」しか言えなかった。また、80歳代のご近所さんたちに、手作り弁当をバイクで届けるのが楽しいと聞き、やはりエネルギッシュと感服した。

 そんな彼女が10年前の初夏、脳出血で倒れる。面会できたのは1カ月後だった。横たわり、定まらない発音で「ムリシタカナア」とゆっくりつぶやく。数カ月の入院を経て、自宅療養に入った。

 彼女の息子は独立し、夫婦2人暮らし。見舞いは控えるかわりに、毎月手紙を書くことにした。行ったところ、見たもの、岐阜の食材などたわいもない内容である。返事が来たこともあったが、次第に音沙汰もなくなった。

 ふと不安にかられる。出し続けていいものか。返事がないからではない。10年近く、一方的に来る手紙が負担だったとしたら。気持ちを重くしていたら。考えだすとたまらなく、心細いまま110通目を投函(とうかん)した昨年の大晦日(おおみそか)。彼女から荷物が届く。

 美しい箱入りの花びら餅、切手シート、そして『この切手でおてがみください』と震える文字で鉛筆書きされた1枚の紙。

 思わず押し頂き、その紙が叔母であるかのように、何度もなでさすった。

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