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【スポーツ茶論】女性アスリートとおしゃれ 清水満

第39回大阪国際女子マラソンの前日、親友からもらった指輪と今大会のために仕上げたカラフルなネイルアートを見せる松田瑞生選手(鳥越瑞絵撮影)
第39回大阪国際女子マラソンの前日、親友からもらった指輪と今大会のために仕上げたカラフルなネイルアートを見せる松田瑞生選手(鳥越瑞絵撮影)

 42・195キロを走り終えてインタビューに臨んだ。10本の指先の爪に施されたレインボーカラーのネイルアートが鮮やかだった。1本、1本すべて違う色、デザイン…。さらに左手の親指と小指、右手は薬指と小指にリングが光っていた。

 先月26日に行われた大阪国際女子マラソン(ヤンマースタジアム長居発着)で優勝した松田瑞生(24)の“おしゃれ”である。

 「気持ちを高めるため…」

 レースに出場する際だけに施すネイルは日々の練習成果を出すための“スイッチ”という。結果は出した。設定記録を上回り五輪代表に大きく前進した。一見、競技には関係ないように思えるおしゃれは、戦うために欠かせない“大事なツール”だった。

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 女性アスリートでおしゃれといえば、フローレンス・グリフィス・ジョイナー(米国)を思い出す。1988年ソウル五輪で100メートル、200メートルなど短距離3冠に輝いた。長く伸ばした指の爪にネイル、片足だけをレオタードに身を包む斬新なコスチューム。ソバージュの髪をなびかせた。

 最近ではシェリーアン・フレーザープライス(ジャマイカ)。2008年北京五輪、12年ロンドン五輪の100メートルで連覇し、ママさんアスリートとなって臨んだ昨年の世界陸上でも100メートルを制したおしゃれ女子。個性的な髪形でも魅する。

 ともに「勝つのは私、だから私のファッションを楽しんで」。そんな主張があった。

 強く、美しい姿。海外ではそんな魅する美を称賛する。

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 近年、日本もカラーリングした髪、個性をアピールするメークなどおしゃれを楽しむ女子アスリートが増えた。化粧品会社もアスリートの美をサポートする。けれどその一方で「そんな暇があるなら、競技に集中しろ」という批判もないわけではない。

 昨年、こんなことがあった。10代から活躍するあるアスリートが、20歳の頃からメークを覚えてあか抜けるとネット上で「調子に乗っている」などとバッシングされた。すると一人のアスリートが自らのツイッターでつぶやいた。16年リオ五輪、バドミントン女子シングルスで銅メダルに輝いた奥原希望だった。

 《これを読んだ時、アスリートは人間としての自由がないのかなと考えてしまう。普通の一女の子としてオシャレしたいとか、可愛くいたいとか、好きなものに囲まれたいとか思ってそれを実現したら…全て『調子に乗ってる』となるのでしょうか》

 古くから日本に根付いていた精神論からなのだろうか。そこから勝手に抱く「アスリートとはかくあるべきだ」という価値観の押し付け。奥原はつぶやいた。おっしゃる通りである。

 そういえば…。1960年代にザ・フォーク・クルセダーズの一員として音楽界を席巻し、現在は精神科医として活躍する北山修さんの言葉が興味深かった。

 「日本では古くから一つの道、一本気、一途とかが美化される。けど人はある種の遊びを加えることで精神的にも落ち着き、新たな可能性を引き出したりするものなんだ」

 なるほど。アスリートだって、おしゃれをすることでスイッチが入ったり自信を持てたりする人もいる。ポジティブになるためにおしゃれするのではなく、おしゃれするからポジティブになれるのである。

 東京五輪まで半年。華麗な女性アスリートの“舞い”を期待し、喝采を送りたい。

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