PR

ニュース コラム

【一筆多論】英王室は国民の信取り戻せ 岡部伸

英国のヘンリー王子夫妻(AP)
英国のヘンリー王子夫妻(AP)

 安堵(あんど)よりも先行きが懸念される。長い混迷を打破して欧州連合(EU)から離脱した英国だが、ヘンリー王子夫妻の王室からの「離脱」が国内の結束に障害となりかねないからだ。

 2020年末までにEUと自由貿易協定(FTA)締結を目指し「移行期間」を延長しないジョンソン首相の強硬姿勢は、スコットランドや北アイルランドから反発を招いた。「連合王国」崩壊につながりかねない。

 しかし、より深刻なのは、もう一つの「離脱」問題であるヘンリー王子夫妻の王室「引退」だ。階級社会である英国には、身分の高い者は公に尽くすべきだというノブレス・オブリージュの精神がある。英国階級社会の頂点とも言える王室は批判が集まりやすい。

 それもあるのだろう。メディアの過剰取材を嫌って女王に相談せず、王室主要メンバーから身を引くとSNSで発表した王子夫妻に国民の怒りが収まらない。

 そもそも18年5月、ウィンザー城で行われた夫妻の結婚式はアフリカ系アメリカ人司祭がタブレットを手に説教をし、聖歌隊がゴスペルを歌う異例さだった。王室の伝統とかけ離れても国民は多様性の時代にふさわしいと祝福し、英メディアも魅力あふれる現代王室と期待した。

 国民が激怒に変わったのは、昨年5月、第1子アーチー君の出産を機に噴出したメーガン妃の浪費だ。英メディアによると、ウィリアム王子夫妻とたもとを分かち、240万ポンド(約3億4100万円)で改装したウィンザー城フロッグモア・コテージに引っ越した。

 米ニューヨークで33万ポンド(約4700万円)かけてベビーシャワー(出産前に妊婦を祝うパーティー)を開き、ジバンシーの洋服だんすを78万7000ポンド(約1億1800万円)で購入する。メーガン妃38歳の誕生日祝いにはスペインのイビサ島に片道2万ポンド(約280万円)のプライベートジェット機で往復。6泊の宿泊費は12万ポンド(約1700万円)に上った。

 エリザベス女王は、宮殿の電気を一つ一つ消して、晩餐(ばんさん)会の残り物も無駄にしない倹約家として知られる。ウィリアム王子家族も昨年夏、女王の招きでスコットランドで夏季休暇を過ごす際、家族で片道350ポンド(約5万円)の格安航空券を購入する質素な暮らしだ。

 公費で贅沢(ぜいたく)三昧(ざんまい)な生活をしていると指摘されるアフリカ系米国人女優、メーガン妃をEU離脱を推進した労働者らが非難したのも当然だろう。

 プロトコルを破ったことも大きい。アーチー君誕生の際、夫妻は「プライベートにしたい」とフロッグモア・コテージにこもり、メールで発表したのは出産8時間後だった。

 王位継承権を持つ子供の誕生には、透明性と情報開示が求められる。英メディアは誕生と同時に発表する慣例を破ったメーガン妃に愛想を尽かし、アフリカ系の出自に触れ始めた。

 保守系新聞に王室不要論が寄せられる事態となり、女王が電光石火で、夫妻の公務引退と王族としての称号返上、公費辞退などを決めたのは妥当だった。

 英王室は国民から敬愛されてこそ、社会安定機能を果たす。国民の不満が高まれば、権威が失墜し、女王を中心とした英国の「国体」が危うくなる。国民の信を取り戻し、分断した国民を統合してほしい。(論説委員)

関連トピックス

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ