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【新聞に喝!】入試改革、場当たり報道なかったか 京都大学霊長類研究所教授・正高信男

 今回で最後となった大学入試センター試験も終わり、受験シーズンも終盤にさしかかっている。来年度からは、大学入学共通テストが取って代わるが、それで何がどうかわるのかいまひとつ不透明なままである。というのも、英語民間検定試験と並んで改変の目玉であった国語と数学の記述式問題の導入が、昨年の年の瀬も押し迫ったころに見送りと発表されたからである。

 文部科学省はずいぶん前から共通テストのための準備を進めてきたはずだが、萩生田光一文科相の「身の丈」発言に端を発し、わずかな期間にふたつの目玉改革の見送りが決まるという展開に驚いた。

 英語民間試験は受験生の地域や経済格差をめぐって問題があると批判され、さらに国語と数学にも飛び火して自己採点の難しさや公平性に多くの疑問が噴出した。記述式の導入見送り発表を受けて各紙は一斉に、政府の入試改革の進め方を厳しく批判する記事を掲載した。

 毎日は「制度設計甘さ露呈」とし、読売は「構想段階から、50万人が受けるマンモス試験で公平な採点が可能なのかとの懸念があった」と、早い段階で問題点が出ていたと指摘した。朝日は「受験生を翻弄した国の責任は重い」と糾弾。産経は「記述式は各大学の個別試験に任せればよい。入試改悪を早急にやめるべきだ」と迫っている。

 実は一昨年11月の共通テスト試行調査で、国語の長文問題に拙文が使用された。私は受験生になった気分で解こうとしたが、正解が分からなかった。とにかく答えを書いて自己採点を試みたが、模範解答を見て部分点がどうなるのかも分からなかった。これはひどいテストだと思ったのだが、自己採点の方法が分かりやすかったといった朝日が取り上げた受験生の好意的な反応に驚き、「暗記力から思考力へ」などと大学入試センター側の狙いをそのまま報じた産経の記事に首をかしげた。今回は一転して、メディア全般の痛烈な文科省批判に驚いている。

 文科省批判の記事を書いた方々のなかで、試行調査のテストを実際に解いてみた記者はどれほどいるだろうか。もし私と同様の感想を持ったならば、当時すでに厳しい見方を示すことができたのではないだろうか。また一方、もし「身の丈」発言が飛び出さなかったら、これほど激しい批判になっただろうか。場当たり的な報道はなかったかどうか、メディアの側も一度考えてみてはどうだろう。

【プロフィル】正高信男

 まさたか・のぶお 昭和29年、大阪市生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。学術博士。専門はヒトを含めた霊長類のコミュニケーションの研究。

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