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【朝晴れエッセー】元旦の合流点で・1月24日

 私の住んでいる茨城県守谷市には剣先と呼ばれる利根川と鬼怒川の合流点があり、私のお気に入りスポットだ。折に触れそこに行き、大きな川の流れを静かに見ている。

 しかし、一度だけその合流点で思いっきり叫んできたことがあった。それは私が1年浪人した後の、大学受験の年の元旦。一人で合流点に行き、「入試ガンバルぞ」と大きな声を張り上げたときだった。

 私には2つ年上の兄がいた。その兄は「魚の養殖で漁民を助けるんだ」と選んだ大学の入試2日前の3月1日、突然の肺気胸で苦しみ、救急車で運ばれたまま死んでしまった。私も海が好きだったので同じ大学を志望し、昼は家業の手伝い、夜は旺文社のラジオ講座を聞き、一人で勉強した。そして合流点の「ガンバルぞ」のおかげで何とか受かり、兄の無念も晴らすことができた。

 そんな私も、昨年11月に古希を迎えた。フィジーの漁業支援ボランティアに行った後は、家内と静かに暮らす日々。ただ、もう少し世の中のお役にと、ある資格を取るために独学を続けている。

 今年の元旦は、初日の出から2時間後、お日さまが真上にかかる合流点に行ってみた。滔滔(とうとう)と流れる大利根を見ていると、死んでから50年以上もたつ兄を思い出した。

 「いつこっちに来るの」と受験生のままの兄が、「もう少しこっちで頑張るよ」と70歳の私。

 そして、やっぱり恥ずかしかったので、左右を見渡し、周りに誰もいないのを確かめてから、「資格試験、ガンバルぞ」と元旦の合流点で叫んできた。

 松見正孝(70) 茨城県守谷市

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