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【朝晴れエッセー】南米の風・1月22日

 70歳になるまでにどうしてもやっておきたいことがあった。南米への旅である。

 予算の関係で、ペルー8日間を選び69歳の春、ついに実行した。マチュピチュ、ナスカの地上絵など日本では見られない風景に出会える旅であった。

 なぜ南米か? 答えは15歳の春に遡(さかのぼ)る。当時、南米移民がまだあって、男子同級生の家族はパラグアイへ移住した。見送りのとき「必ず私も行くからね」と言ってしまったのである。嫁としてか旅人としてか、までは言わなかったが。何しろ15歳の娘である。

 それから半世紀。インターネットを見れば、現地でそれなりに活躍しているらしい状況も分かり、70歳のおじさん顔も見た。でも、実際に会って話がはずむかどうかは不明である。別々の人生を生きてきている。

 地元大学に進み、縁あって学生結婚。県庁に勤めながら子育てをしたり、ボランティアで楽しい時間を持つだけの私。

 一方彼は、電気もないイグアス移住地で、森林を開き農業に従事。その国の人と結婚している。想像するだけであるが、大変な苦労もあっただろう。

 1日1回転する地球に住みながら、まさに別々の人生ではないか。今吸っている空気は、昨日南米の彼がはいた空気かもしれないが、2人の苦労には天と地ほどの差があろう。

 関西空港から米国を経由して25時間。ようやく着いたリマから国内機で標高3000メートルのクスコへ。次は列車でマチュピチュ村へ。遺跡を見おろす高台に立った私は、パラグアイの彼、日本の香川県の私の、それぞれの55年の人生を心に思いつつ、南米の風を胸いっぱいに吸い込んだ。

大森 芳江 70 高松市

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