PR

ニュース コラム

【風を読む】対中の矛先鈍る懸念は杞憂か 論説副委員長・長谷川秀行

米ホワイトハウスで記者会見するトランプ大統領(UPI=共同)
米ホワイトハウスで記者会見するトランプ大統領(UPI=共同)

 これからの1年、やはり世界中が米大統領選に振り回されるのだろうと改めて思う。米中貿易協定の第1段階署名式に臨んだトランプ大統領の誇らしげな姿を見て、その意を強くした。

 トランプ氏を喜ばせたのは、2千億ドルもの輸出拡大策である。一方で中国の産業補助金や国有企業優遇などの構造問題を先送りしたのはご承知の通りだ。これらは中国の一党独裁体制を支える国家資本主義の根幹だが、そこに切り込むよりも、まずは大統領選で誇示したい輸出拡大に飛びついた。

 いかにも「貿易赤字=損」とみるトランプ氏らしい。中国の覇権追求を阻もうとする米議会やホワイトハウスの意思がいかに強くても、肝心のトランプ氏の「一丁目一番地」は、あくまで赤字削減なのだとつくづく思う。

 振り返ると、2018年に米中対立が本格化したころからトランプ氏の手法で気がかりなことがあった。制裁関税は自由貿易を歪(ゆが)めるとか、経済に悪影響を及ぼすとかいう、よくある話とは別にである。それは、中国に正面から対峙(たいじ)する方向に舵(かじ)を切ったのに、その取り組みが中途半端に終わり、かえって中国の強国路線を温存することになりはしないか、という懸念だ。

 はっきり言えば、トランプ氏が対中輸出拡大に満足し、中国への矛先が鈍る可能性である。この点について筆者は以前からコラムなどで指摘してきたが、構造問題より目先の成果にこだわる今の姿をみると、それが現実にならないかと、ますます心配になる。

 改めて述べるまでもなく、中国には構造問題に対処する姿勢が全くみられない。通商白書によると、17年の中国政府の補助金は上場企業だけで約2・2兆円に上り、09年の3・7倍に膨らんだ。4割以上は経済、軍事の覇権確立に向けた国家戦略「中国製造2025」で重点分野としたハイテク産業などに流れた。政府系ファンドによる、さらに巨額の支援もある。にもかかわらず、これらが国際ルールに反するという疑念は解消されないままだ。

 これをいかに改めさせられるかである。トランプ氏は経済への多大なリスクを顧みず貿易戦争を仕掛けた。それなのに大山鳴動して鼠(ねずみ)一匹というわけにはいくまい。米中交渉をめぐる筆者の懸念が杞憂(きゆう)に終わることを願う。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ