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【朝晴れエッセー】父の再就職・1月20日

 30年、警察官を務めた父が再就職したのは銀行だった。ほとんど交番勤務だったので、警備関係だと思っていたら、営業と聞き、家族は驚いた。

 それが意外にも実績を上げた。

 5歳で母を亡くした父は、尋常小学校を出てすぐ、四国から大阪に丁稚(でっち)奉公に出たと聞く。負けん気が強く苦労したそうだ。警察官時代は、24時間勤務の日に弁当を2個持っていくが、たまに弁当を届けに行かされることがあった。

 私が中学生のとき、届けに行くと交番にはおらず、腕まくりをしてドブ掃除をしていた。恥ずかしくて「なんで警察官がそんなことするんや!」と言うと、一人暮らしのおばあさん宅で「市役所に言うてもすぐ来てくれへんから、台所が水浸しやから、しゃあないやろ」と。おばあさんがお礼にと、むいてくれたリンゴの味は忘れられない。

 労と汗を厭(いと)わないのである。

 父は金銭感覚には疎かったが、警察官は一般的に苦手な人が多いようで、再就職後は、その手続きや相談に走り回り、夏は背広が汗で白く粉をふいてても平気で、母を嘆かせた。

 やがて退職金の相談は父に…が多くなり、家族以上に銀行が驚き、実績に対するボーナス比率を慌てて訂正されたとか。そして、とうとう東京の本店で全国表彰されるまでになった。

 しかし、父は職場では浮いていたそうだ。

 なにせ、誰よりも早く出勤し、皆の机を拭いたり掃除をしてたとか。要領が悪く空気が読めないのである。近くにいたらアドバイスできたのにな、と悔やみました。

 今年も正月に来た3歳の孫が、仏壇の木魚で遊んでから手を合わせる姿を見ながら、父が天国で苦笑いしている顔を思い浮かべ、頬を緩めています。

鈴木勝彦 76 群馬県千代田町

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