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【朝晴れエッセー】たったひとりの上映会・1月19日

 田並劇場という、昭和25年にできた映画館を、若いご夫婦が復活させている田舎の小さな劇場があります。

 ご夫婦による創作活動やイベントも行われていますが、年に何回か、往年の名画が上映されます。以前から観たいと思いながら、上映日に予定が重なり、なかなか機会がありませんでした。

 クリスマス前の雨の夜、かの名作、ジェームズ・スチュワート主演の「素晴らしき哉、人生!」が上映されるということで、私はワクワクしながら足を運びました。

 ところが、開始時刻が近づいても観客は私ひとり。雨は止む様子もなく、がらんとした場内にジャズが流れ、ストーブがいくつも赤々とついています。

 「あのう、ひとりでも上映されます?」

 ひとりのために申し訳ない、という思いで尋ねると、

 「もちろんです。ぜいたくにいきましょう」とご主人の明るい声。

 ストーブの近くに座布団付きベンチという特等席をご夫婦で運んでくださって、映画が始まりました。

 不運が重なり、夢はかなわなかったものの、希望を捨てず家族や友人、街の人々を大切に日々を送る主人公の生き方が、ユーモアを交えながらていねいに描かれ、最後の心温まるどんでん返しに、終演後、私は思わず大きな拍手を送っていました。

 上映の赤字は覚悟で、草刈り作業などで穴埋めされている、というお話をうかがい、

 「ひとりでもたくさんの方にいい映画を見ていただきたくて、何とか続けています」

 と、おっしゃるご夫婦に映画の感動が重なり、ぜいたくな時間をいただけたことに感謝でいっぱいになりながら、田並劇場を後にしました。

畑野とし子 66 和歌山県串本町

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