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【直球&曲球】春風亭一之輔 ネット世界の「普通の人」が怖い

春風亭一之輔
春風亭一之輔

 今年も正月の寄席は大盛況だ。

 寄席の世界では20日までがお正月。高座に大きな鏡餅も飾られ、餅にくくられた伊勢エビも次第にかんばしい香りを発してくる。

 高座を終え、楽屋口を出るとよくいるのが、大量の色紙を抱えて芸人の出待ちをしている人たち。

 落語好きならよいのだが、「サインしてください!」「いいですけど、私の名前、ご存じですか?」「はい…えーと…どちらさんでしたっけ? まぁ、いいから早くサインください!」…みたいな失礼のカタマリみたいな輩(やから)もいる。本当にいる。

 こういう人は、どうやらサイン色紙をネットオークションにかけて小遣い稼ぎをしているようだ。出演者の多い正月の顔見世興行で食い扶持(ぶち)を仕入れようということみたい。ご苦労さまです。寄席芸人のサインじゃ飯は食えないけどね。

 ネットオークションをのぞくと自分のサインや名入りの手拭い、扇子が出品されていた。ご丁寧に日付が入ったままのサインがあった。

 日付があると誰あてのものか見当がつきやすいので、日付は消すのが基本です。気をつけろ、出品者。

 噺家(はなしか)の手拭いは販売用ではない。正月の年賀に仲間内やお客さまに配るものだ。

 「お客さま」とは「寄席の観客」ではなく、いわゆる「ご贔屓(ひいき)」ということ。扇子も真打ちに昇進したときにあつらえたご挨拶(あいさつ)の品。手拭いも扇子もいわば「私の知っている人」が出品したものだろう。とてもせつない。

 今、この文を書いているときに新宿駅南口での自殺者のニュースを知る。遺体をスマホで撮影する通行人がいたとか。もうやめてくれよ。

 手拭いとはレベルが違うが、なんか通じる気もする。絶対すべきでないことを軽々と超えてしてしまう、ごく「普通の人」が増えてるなぁ。

 今年は良い年でありますように…という願いを込めて求められた色紙には「ねずみ家チュー助」と書いといた。

 まだネットオークションには上がってないようだ。

【プロフィル】春風亭一之輔

しゅんぷうてい・いちのすけ 落語家。昭和53年、千葉県生まれ。日大芸術学部卒。平成13年、春風亭一朝に入門して朝左久、二つ目昇進時に一之輔を名乗る。24年、21人抜きで真打ちに抜擢(ばってき)。古典落語の滑稽噺を中心に、人情噺、新作など持ちネタは200以上。

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