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【主張】エネルギー 安定供給を改革の原点に 多様な電源構成で基盤強めよ

 今年は日本の電力にとって節目の年となる。小売りの全面自由化など電力システム改革の総仕上げとなる「発送電分離」が4月に実施され、大手電力会社から送配電部門が切り離されるからだ。

 新電力などが大手電力の送配電網を使いやすくすることを目指しており、電気料金の引き下げなど顧客獲得をめぐる競争がさらに激しくなると予想される。システム障害などを起こさないように周到な準備が欠かせない。

 利用者の選択肢が増え、サービス向上につながる取り組みは大いに歓迎したい。だが、政府が主導する電力・ガスの自由化は、何よりも安定供給を前提としなければならない。監督官庁の権限ばかりが強まるような「自由化のための自由化」は論外である。

 ≪仕上げの「発送電分離」≫

 とくに最近では台風などの自然災害で大規模な停電が相次ぎ、安定供給の要請はさらに高まっている。中東地域における緊張度が増す中で、国家としてエネルギー安全保障の確立も忘れてはならない。安定的な資源輸入と電源の確保、送配電網の維持・管理を改革の原点とする必要がある。

 東京電力の福島第1原発事故に伴い、原発に注がれる国民の視線は厳しい。政府の原子力規制委員会は新規制基準で原発の安全性を審査しているが、審査作業の停滞などで再稼働した原発は全国で9基にとどまる。それらもテロ対策施設の完成遅れで年内に順次、運転停止に追い込まれる。

 一方で太陽光など再生可能エネルギーの導入が拡大し、一時期ほど電力不足は叫ばれなくなった。温室効果ガスの排出削減に資する再エネに対する期待は大きい。ただ、天候などに左右される再生エネは安定電源にはならない。発電量の変動を調整する電源として火力発電も不可欠だ。再エネ導入のための賦課金は電気料金の1割超にのぼり、家計負担は深刻だ。

 環境問題への関心の高まりを背景に石炭火力に対する風当たりは強まるばかりだ。最近は国内発電所の主力燃料である液化天然ガス(LNG)も化石燃料だとして批判が噴出している。

 原発に続いて石炭、そしてLNGも封印されるような事態になれば、日本のエネルギーは立ち行かなくなる。

 こうした各種の電源には一長一短があり、再生エネも例外ではない。それらを上手に組み合わせて活用するのが電源構成の基本である。安全性を確認した原発を含めて電源構成を多様化し、温室ガスの排出削減を着実に進めることが資源小国の日本が環境を守りながら安定電源を確保する道だ。

 電力自由化で注目されているのが「分散型エネルギー」だ。大型電源と大容量の送電線網による電力供給システムに代わり、地域を中心に地産地消型の自立したエネルギー供給網を想定している。そこでは太陽光など再生エネが主役と位置付けられ、地域興しにつながる新規産業として自治体の実証実験も始まっている。

 ≪全国一律制度の変更を≫

 一方で政府は大手電力会社の電力系統の強化も計画している。一昨年9月に北海道で発生した全域停電(ブラックアウト)の再発を防ぐためだ。しかし、全国規模の電力系統を増強しながら、地域のエネルギー供給網も整備すると二重投資になりかねない。人口減少が広がる地方では効率的な投資のあり方を考えたい。

 大手電力の地域独占を排し、健全な競争を通じて料金引き下げやサービス向上を促す自由化は、ガスや通信、鉄道など異業種による相次ぐ新規参入によって電力市場に活性化をもたらした。ただ、競争を求める自由化は本来、安定供給とは相反する関係にあることも認識しておくべきだ。

 電力の安定供給には、送配電網に対する継続的な保守・修繕が欠かせない。しかし、電力業界では競争激化でそうしたコストを削減する動きが続いている。昨年秋には千葉県を中心に台風被害で大規模停電が起きた。自由化の進展が停電の発生とその長期化を招いた影響は否めない。

 全国一律の自由化の制度設計も見直しが不可欠だ。政府は電力・ガスに都市と地方で同じ競争を求めているが、地域によってエネルギー事情は大きく異なる。大手電力・ガス会社は地方経済の支え手の役割も期待されており、その後押しも同時に検討したい。

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