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ニュース コラム

【朝晴れエッセー】槍は通すもの・1月3日

 北日本で「ドカ雪」のニュースを見て、私は50年前を思い出した。

 結婚相手の家族に会うため、1月2日に晴れ着で大阪発の特急白鳥号8時発に乗車。隣の席には60歳代の紳士。

 特急は新潟の糸魚川までやっとたどり着いたとき、車内アナウンスで「猛吹雪で進めません。大阪へ戻ります」とのこと。私は山形県まで行きたかったので、

 「困ったなぁ。やりきれませんね」とつぶやいたら、その人は「槍(やり)は切るものではありません。通すものです。やり通しなさい」。

 私は旅行の目的を語っていたので、続いて、「貴女(あなた)は米原で下車して東京へ出て、東京からは…」と親切に教えてくださった。

 糸魚川の駅長室から彼の家へ電報を打ち、相当時間遅れ遅れして、山形県に到着した。

 その後、3月に挙式し、昨春、結婚50周年となった。98歳の元気な兄や姉、妹に会いに行ったとき、兄は「Y子さん、よくもったね」と言われたら、主人はすかさず「お互いさまや」と笑った。

 「槍通しなさい」と言われた初老の紳士にいま、再びお礼を言いたいと思った。

 その人は、「大阪へ戻り、飛行機で北海道へ行きます」と語っておられたが、今頃は天国におられると思う。

 天国に向かって。あの一言は大変な雪の中を、草履がズーっと沈むホームを進み、山形へ行きました。いまの幸せがあるのは、あの一言「槍通しなさい」でした。

佐藤友伎子 79 大阪府池田市

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