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【朝晴れエッセー】やさしい時間 全国から力作 一日の始まり応援

財布の中の
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 ■10月の月間賞 『財布の中の』

 就寝前、あらかたの片付けを済ませ、財布の中を整理していると、小銭の中から見覚えのない、外国の小さな硬貨が出てきた。

 入れた覚えもなければ、受け取った覚えもない。

 くすんだ銀色で、眼鏡を掛けた男性の横顔と、裏には東南アジアと言われれば思い浮かべるような建物の絵。

 刻んである文字はアルファベットとは全くちがう。以前勉強していたネパールやインドの文字とも違う。そして硬貨の裏と表の天地は逆。

 なじんだ日本の硬貨の、天地の揃った安定感に慣れていると不思議な感じがする。

 記憶を探りながら、何かヒントはないかといじりつつ、ふと1円玉と重ねると、同じ大きさと厚み。スーパーでの買い物のお釣りに紛れていたのだろうか。

 普段、小銭入れの中身を、改めて眺めることは少ない。

 今日見つけなければ、気付かずに使っていたかもしれない。

 どこの国の硬貨だろう。インターネットで調べれば、すぐにもわかりそうだが、なんとなくそうする気分にはなれない。

 縁があってうちに遊びに来た外国からのお客さん。

 行ったことのないその国に、ご縁が出来たようで、硬貨は財布のポケットに入れ、時々取り出しては眺めている。

 野坂つづる 44 大阪市東淀川区

 完成度が高い。日常の何げない光景を切り取りながら、世界が見える気がする作品。

健康のバロメーター
健康のバロメーター
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 ■11月の月間賞 『健康のバロメーター』

 3歳の次男は、恐竜好きだ。きっかけは、おじいちゃんにもらった恐竜図鑑。図鑑にはDVDが付いており、何度も見るうちに、ティラノサウルスになりきるようになってしまった。

 「ガアアアッ」。歩き方、首の動かし方、ほえる声、何もかもティラノサウルスそのものである。

 あるとき私が洗い物をしていると、おしりに衝撃があった。「いたっ! なに?」

 見ると次男がにやり。チョキの2本の指を、少しおり曲げ、口を開けている。ティラノサウルスだ。

 「もう! お尻かまないで!」。私がにらむと、とびはねながら逃げていく。ティラノサウルスになりきっているときに、どれだけ話しかけても返答はない。ため息をつきつつ、家の中では大目にみていた。

 しかしである。外でもティラノサウルスになるようになってしまった。近所の人に出会っても、首をぐるりと回し、とびはねながら走り去ってしまう。

 「すみません、今、恐竜になりきっていて…」。言い訳をしつつ、追いかける。恥ずかしい。いつまでこれが続くのだろう。

 そう思っていたところ、次男が熱を出した。数日、ティラノサウルスのいない日が続く。静かだった。私はふと、次男のまねをして、少し背中を曲げ、とびはねるように走ろうとしてみた。きつい。息切れがする。元気なときでないと、ティラノサウルスにはなれないのだ。

 「ガアアアッ」。熱が下がり、次男はまたティラノサウルスになった。私は、今日も健康で何より、と考えることにした。

 佐竹加織 43 大阪市住之江区

 3歳の男の子の姿をいきいきと描けている。客観的に描写することで、かわいさを引き出した。

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