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【朝晴れエッセー】温かい布団・12月28日

 結婚以来、使っていた布団がずいぶんくたびれてきた。新しい物を買うか、主人に尋ねようとしたとき、

 「まてよ」とひらめいた。

 結婚時に持ってきた嫁入り布団があるではないか。

 私が嫁いできた三十数年前はバブルの入り口。地域柄か、婚礼の荷物がトラック何台分かを競う時代であった。

 主人と結婚が決まったとき、最初に考えたのはお金のことだった。幸い会社勤めをしていたので、少しは貯金がある。父母に相談すると、そのお金は自分で持っていなさい、と言われた。

 実家は林業を営んでいた。山の木を育てるのは60年以上かかる。売るのは数十年に1度。その上、私には姉が4人いた。皆、短大まで行かせてもらい、世間に恥ずかしくないような結婚式を挙げてもらった。

 私も姉たち同様に、タンスや鏡台、長持(ながもち)などを紅白の布で荷飾りしてもらって嫁入りした。

 その長持の中の布団は、お客さま用に使うものだ、と母から聞かされていた。

 時代は変わり、婚礼も葬儀も自宅で行うことがなくなり、個人宅に泊まる客もいなくなった。この私の提案を同居の義母に相談したところ、快く賛成してくれた。

 長持から出して、日光にあて、キャラクターのカバーを掛けると、新品のお布団になった。ふんわりと軽く、包み込まれる感触と温かさに、いまさらながら両親の愛を感じるなんて、私は幸せ者だ。

 「もっと寝ていたい」と思う私に、あきれて笑っている父母が見えた。

飯田善美 58 農業 奈良県葛城市

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