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【ビブリオエッセー】アメリカの光と影 「富めるもの貧しきもの」アーウィン・ショー著 大橋吉之輔訳(ハヤカワ文庫)

 キラキラ輝いて見えたアメリカ。子供の頃、テレビドラマで見たアメリカは豊かさの象徴だった。

 しかし、移民の国アメリカがそんなに単純なものではないと、この本を読み始めるとすぐに気づく。しかも時代は1945年から1968年、第二次大戦末期からベトナム戦争の間の激動のアメリカである。ドイツからの移民一家の、性格のまったく違う姉と兄弟が時代の波に乗り、また飲み込まれながら、自分の人生を切り開いてゆく。

 30年も前に物語の面白さから一気に読んだ。3人それぞれの個性が眩しかった。富めるものとは、貧しきものとは-。その頃は勤勉さで成功する長男ルードルフとその粗暴さから問題続きの次男トマスの対比と思えた。しかし歳月を経て再読すると、いやそうではない。富めるものにある冷徹さ、貧しきものにある寛容さも含め、一人の人間の中に豊かな部分も貧しい部分もあるのだと思えてくる。

 アーウィン・ショーと言えばニューヨークを舞台に男女の機微を皮肉たっぷりに語るおしゃれな短編の数々で愛されている。しかしこの長編は人生何が起こるか、何が幸せかわからないと語りかけ、ハラハラさせながら私たちを衝撃のラストへ導いてゆく。広大な大地を背景にしたスケールの大きな物語だ。

 悩めるアメリカ。大国アメリカの人々が出口を見つけられず、こんなにももがいていた時代。私たち日本人は、戦後の復興から高度経済成長へとひたすら上を目指して走り続けていた。

 神戸市中央区 大久保優67

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