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ニュース コラム

【朝晴れエッセー】琉(りゅう)ちゃん・12月17日

 牛車のまえに連れてこられた琉ちゃん(水牛)は、自分で台車の柄をかたに乗せて私たちを待っていた。ガイドさんの「琉、歩け」の声で歩き出した。

 しばらく行くと一休み。大きな耳をかたむけて説明しているガイドさんの様子を見ている。そして歩けの声に動き出し、また一休みと。

 そんなことを繰り返しながら、竹富島の集落を巡ってくれる。その姿を見て台車に20人もの人を乗せて、さぞ重かろうと思った。私は思わず、かわいそうと声を出してしまった。「そんなことはありません」。ガイドさんの言葉が返ってきた。

 昭和20年代に田舎で過ごした子供の頃の風景が脳裏に浮かんだ。道路は舗装もされず、土と砂利で雨の日は水たまりが、馬や牛の糞(ふん)があちこちに落ちて砂ぼこり。農家の屋敷には鶏や豚が食用に、牛や馬は農耕、荷駄用として飼われていた。

 戦後の貧しい時代ではあったが、家畜は家族同様に扱われ大事に育てられていた。時代は様変わりして、現在はその面影すら見ることは不可能になってしまった。

 ガイドさんが沖縄民謡「新安里屋ユンタ」を奏でながら歌ってくれる。心地よい音色と古い集落の原風景を楽しんで、牛車から降りてまわりを散策していると、仕事を終えたガイドさんが、水牛の顔を撫(な)でている。水牛は何度も顔をよせてうれしそうに戯れていた。

塚本 恭子 82 東京都杉並区

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