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【風を読む】反習派の洗い出しが狙いか 論説副委員長・佐々木類

中国は三権分立を否定している(AP)
中国は三権分立を否定している(AP)

 刑法と反スパイ法に違反したとして中国当局に拘束されていた北海道大の教授が先月、無事帰国した。家族はさぞ、安堵(あんど)したことだろう。

 今回の事件は、共産党独裁体制がいかに異質で危険であるかを如実に表した。他にもまだ、理由不明のまま拘束されている邦人がいる。今後もいつ何どき、中国を訪れた邦人が、理由を明らかにされぬまま拘束されるか分からない。教授の帰国をもって一件落着とするわけにはいかないのだ。

 だいたい、スパイといえば、国益を著しく損ねる行為である。にもかかわらず、早期に帰国できたのは、日本政府の働きかけによる政治決着という側面もあろう。中国の事情をよく知る日本人の中国研究者らの反発の広がりも後押ししたに違いない。それ以上に思うのは、拘束理由がそもそも濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)だったのではないかという点だ。

 想起したいのは、中国が三権分立を否定しているという事実だ。中国共産党支配から独立した司法判断は存在しないのである。習近平政権は「法に基づく統治」を唱える一方で「法治」は党の指導下にあるとも強調する。何をしようがしまいが、利用価値があると目をつけられれば、何とでも理由をつけて拘束されてしまう怖さがある。日本人の中国研究者らも、資料収集などのために訪中したくても、危なくてオチオチ研究などできまい。日本人中国研究者の中国離れは、中国にとっても国益を損ねることになるだろう。

 来春、習近平国家主席が国賓で来日する。波風を立てたくない安倍政権がどこまで中国の嫌がらせに耐えられるのか。尖閣諸島海域への中国公船の動きも含め、水面下でそれを試されていた面もあったのではないか。だとしてもなぜ、中国が北大教授に利用価値を見いだし、拘束対象に選んだのか。

 気になるのは、北大で博士号を取得したウイグル族研究者が昨秋、中国当局に拘束され所在不明となっていることだ。それだけではない。習近平国家主席が終身主席となるための憲法改正を批判した中国人学者と北大との接点が浮かび上がっている。北大が反習近平派の拠点化しつつあるとみた中国当局が、警告を含めてその芽を摘むために北大教授を拘束し、人脈の洗い出しに出たとみるのはうがち過ぎか。

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