【朝晴れエッセー】蜘蛛(くも)・11月30日
わが家はクモを飼っている。
朝に夕にダニやら蚊などを与えているわけではもちろんない。
見かけても追い払わない、やっつけない。支障のない限り巣は払わない。時に水に足を取られ、ジタバタしているのを見かけると、すくい上げる。
わが家に住みつくエサなる害虫をご自由にどうぞ、というスタンスではある。クモはその姿、色からか、何かと嫌われ、怖がられる存在で、クモ退治殺虫剤まであるのを見ると胸が痛い。
しかし、時に出没先を間違えてか、食卓の上にポトンと下りてきたりする。そんな折、ここは違うでしょ…、と指でトントンと威嚇してやると、あたふたとピョンピョンと逃げるさまは意外にかわいらしい。
またまれに、雨上がりの庭で、見事に大きく張りめぐらされた巣が乾ききらず、そこに陽が射し、キラキラと輝き、文字通り、クモの巣状の天然のイルミネーションとなる場面に会えるときがある。思わず「きれい!」と見入ってしまう。
春先に壁紙の上に黒点ほどで姿を見せ始め、夏の終わり頃には、8本の足もしっかりと、丸々太って、クモ!と一目で分かるほどに成長している。間もなく寒さ厳しくなる頃には、子孫を残して生を終えるのだろう。
卵として冬を越すのだと思う。来春もまた、わが家の害虫バスターズとして元気に登場してほしい。
そんなこんなで、わが家はクモを飼っている。
藤原歳子(75) 大阪府茨木市