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【新聞に喝!】英語民間試験延期、大学側の検証も 京大霊長類研教授・正高信男

会見する萩生田光一文科相=1日、東京・霞が関の文科省(古厩正樹撮影)
会見する萩生田光一文科相=1日、東京・霞が関の文科省(古厩正樹撮影)

 文部科学省が令和2年度の大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入見送りを今月1日に発表し、各紙は大きく報じた。同時にいずれも、本番が迫るなかでの方針転換による現場の混乱を伝えていた。一方、私がこのニュースを聞いてまず思ったのは、民間試験を導入しないのならば、従来型の試験問題を今後1年余りで準備できるのだろうかということだ。ただ調べるうちに、これは誤解にもとづく杞憂(きゆう)であることがわかった。

 文科省は大学入試センターが作るマークシート式の試験と併せて、民間試験を導入しようとしていたのだ。誤解は私だけかと思ったら、大学で働く私の同僚も誤って理解していた。新しい方式そのものが一般にはわかりにくいものだったのだろう。

 大学が民間試験の成績についてどのように学生選抜に使うかは、各大学が決めるということであった。ということは、多くの大学が民間試験に直ちに乗り換えることにリスクを感じ、最初の年は従来型で行くと決めていたら、さほど大きな混乱は起こらなかったのではないだろうか。実施状況や民間試験を利用する効果を見極めるために1年ぐらい様子をみるというのは、実に常識的な判断だろう。

 だが文科省の旗振りで多くの大学は、民間試験の成績で受験生の英語能力を判定することに舵(かじ)を切っていた。そのため、民間試験を想定して受験準備を続けてきたにもかかわらず、延期決定によって、やにわに試験対策を切り替えなければならない高校生が大量に生み出されたと思われる。

 学生の選抜方法というのは本来、それぞれの大学が主体性を持って、そのあり方を考えるべきものであろう。ところが多くの大学が、本当に必要な判断を放棄しているようにもみえる。英語の試験について従来型の「読む・聞く」に「書く・話す」も加えた4技能測定が不可欠だという昨今の流れがあるが、それについて主体的な評価を下すこともなく、何となく乗っかってはいないだろうか。

 少子化が進むなかでも大学は増え、試験問題を自前で作る負担に耐えられない大学が増えているといわれる。本当に必要かどうかよりも、負担を減らしたいがゆえに民間試験に頼るという思惑はないだろうか。メディアが文科省の責任を追及するのは当然であるが、この際、大学側の問題も検証してみるべきではないだろうか。

【プロフィル】正高信男(まさたか・のぶお) 昭和29年、大阪市生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。学術博士。専門はヒトを含めた霊長類のコミュニケーションの研究。

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