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【新聞に喝!】世界が俯瞰できる紙面に インド太平洋問題研究所理事長・簑原俊洋

ラトビアのレヴィッツ大統領(ロイター)
ラトビアのレヴィッツ大統領(ロイター)

 先日、ラトビア政府の招待によって、安全保障に関する国際会議「リガ会議」に参加する機会を得た。同国がいかにリガ会議を重視しているかは、大統領、首相はじめ、防衛相や外相までもが出席することからもうかがえよう。

 ラトビアはバルト三国の真ん中に位置する。ロシアと国境を接するため北大西洋条約機構(NATO)の最前線となっており、現在カナダの部隊が駐留している。くわえて、日本では広く知られていないが、「NATO戦略的コミュニケーション・センター」も同国に置かれている。

 ラトビアの地政学的な位置からすれば、主たる関心はおのずと冷戦の終焉(しゅうえん)まで同国を占領していたロシアに向けられる。それゆえ、ロシアによるクリミア侵攻を契機に、これまでのリガ会議ではロシアが中心的議題を占めていた。

 しかし、この度の会議は違った。主催者は、中国をロシアよりも大きくかつ差し迫った脅威として捉え、中国の行動が国際政治に及ぼす余波を討議する部会を設けた。そこで肌身で感じたのは、現在の欧州がいかに厳しい対中姿勢に転じつつあるかとの実態だった。ウイグル族などに対する人権侵害、法の支配の無視、借金漬け外交、香港問題、そして北極圏を含む海洋権益の拡大など、もはや中国の行動は看過できないというのが大方のヨーロッパ人の見方である。むろん、かつてのように米国に頼れないからこそ中国に対する危機感はさらに増幅されるのであろう。

 だが、リガ会議に参加していた日本のメディア関係者は皆無だった。所詮、狭い欧州だ。ベルリンからリガまで飛行機で90分も要さない。ヨーロッパや北米のみならず、多くの安全保障の専門家が集う会議で取材すれば、得られる知識は多い。にもかかわらず、現在の日本の新聞からは、こうした現場感はなかなか伝わってこない。

 知人の記者たちからは、新聞離れが止まらないとの嘆きの声を常に聞く。この状況打開のためには、より魅力のある紙面の提供が必要不可欠だ。質や量のみならず、国際面についていえば、世界を俯瞰(ふかん)できるような紙面である。

 とはいえ、現状で確実に増えている部分といえば広告の量だけ…。これでは無料の情報をインターネットで求める流れを食い止められない。世界第3位の経済大国、否、「責任ある大国」にふさわしいメディアを望むのは、果たして筆者だけであろうか。

【プロフィル】簑原俊洋

みのはら・としひろ 昭和46年、米カリフォルニア州出身。カリフォルニア大デイビス校卒。神戸大大学院博士課程修了。博士(政治学)。同大学院法学研究科教授。専門は日米関係、国際政治。

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