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【主張】「壁」崩壊から30年 民主主義守る決意固めよ

 ■アジア新冷戦へ対応急げ

 30年前の1989年11月9日、東西冷戦の象徴だった「ベルリンの壁」が崩壊した。同年12月の米ソ首脳による冷戦終結宣言や、91年12月のソ連崩壊により、冷戦構造は終わった。

 だが、アジアでの状況は様相を異にする。中国という共産党独裁国家が自己主張を強め、自由貿易体制に便乗して歪(いびつ)な肥大化を遂げた。中国の不公正貿易や覇権主義を正そうとする米国と中国の対決構図は「新冷戦」と称される。

 「壁」崩壊から30年を経て、冷戦の前線は欧州からアジアに移った。日本は現実を直視し、自由と民主主義、法の支配を守り抜く決意を改めて固めるべきだ。

 ≪歴史は終わらなかった≫

 世界はこの理念を共有し、一つになるのではないか。「壁」崩壊当時の世界では、こんな期待感や楽観論が支配的だった。ソ連に牛耳られた東欧諸国や東ドイツ国民の、自由と民主主義への渇望こそが、独裁と抑圧の「壁」を突き崩したからにほかならない。

 東西ドイツは11カ月後に再統一を果たし、共産主義の総本山だったソ連もあっけなく崩壊した。米政治学者のフランシス・フクヤマ氏が有名な論文「歴史の終わり?」で、冷戦終結を自由主義の最終勝利と位置づけたことはよく知られている。

 しかし、当時の熱気は今や新たな脅威の出現で、遠い過去のものとなりつつある。朝鮮半島は北緯38度線で分断されたままだ。北朝鮮は世襲の独裁体制を続け、核開発やミサイル発射で日本に脅威を与え続けている。北朝鮮による国家犯罪である日本人拉致問題にも解決の道筋が見えない。

 中国は89年6月、天安門事件で民主化運動を武力鎮圧し、暴力と弾圧で体制を護持する姿勢を鮮明にした。当時の日米欧による手ぬるい対応は痛恨の極みだ。中国が経済的に成長すれば民主化するという欧米や日本の見立ては間違いだった。蓋を開ければ中国は、一党独裁を維持強化しながら、冷戦終結で加速したグローバル化の波に乗り、日本を追い抜いて世界第2の経済大国にのし上がった。

 対外的な覇権主義も顕著だ。中国は内海化を狙い、南シナ海に一方的に九段線を引いた。軍事拠点化を進め、東シナ海で日本への挑発行動を繰り返す。香港の民主化要求に耳を貸さず、台湾には武力統一の圧力をかけ続ける。覇権を目指し、巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げ、小国を借金漬けにして勢力圏を拡大する。

 自由と民主主義、法の支配といった価値観を全く認めない軍事・経済大国が、民主主義の国・地域を併呑(へいどん)しようとしている危機を片時も忘れるべきでない。

 ロシアでもまた、民主化の流れは定着しなかった。ソ連崩壊後の急進的な市場経済化で国は大混乱と困窮に陥り、安定と「強い指導者」を待望する世論を生んだ。

 プーチン露大統領は議会や司法など民主主義の仕組みを骨抜きにして長期政権を維持している。プーチン氏は今年6月の英紙インタビューで、普遍的な価値観である自由主義を「時代遅れだ」と言ってのけた。ロシアは中国との関係を「準軍事同盟」といえる水準にまで高め中国と連携して覇権主義を追求している。

 ≪魅力的な繁栄の道示せ≫

 冷戦終結で加速した自由主義経済の流れには、行き過ぎた面もあった。その一つの帰結が2008年のリーマン・ショックだ。グローバル化に技術革新が重なり、その波に乗った人とそうでない人の格差が多くの国で拡大した。

 欧米ではポピュリズム(大衆迎合主義)が勢いづく。東欧民主化の旗手だったハンガリーやポーランドでは今、欧州連合(EU)の政治統合に懐疑的な政権が誕生した。東欧諸国は「一帯一路」に協力的だ。EUの基軸国ドイツでも、中道勢力が退潮し、大衆迎合的な右派政党が躍進している。

 中国やロシアのような体制下で暮らしたいと思う日本人は皆無に違いない。この当たり前の感覚を政策や行動に反映させることである。安全保障政策に万全を期し、価値観を共有する国々との連携を強めるのは当然のことだ。

 国力を高め、自由、民主主義、法の支配が魅力的な繁栄の道であることも示していかねばならない。変化の速度が格段に速くなった世界にあって、どのような民主主義や市場経済が最適解なのかを探る努力も欠かせない。

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