PR

ニュース コラム

【朝晴れエッセー】行ってらっしゃい!・11月6日

 夫は79歳で後期高齢者。だいぶ弱ってきているとはいえ気力はあり、町内会の地域パトロール、ボランティア活動、地区センターでのテニス、卓球、囲碁と各教室へ精力的に参加し元気に活動をしている。

 家に引き籠(こも)っているより大いに結構なことは分かっている。近頃、夫が出かけるたび、「行ってくるよ」と私に声掛けをしてくれるが「行ってらっしゃい」と素直に返事をするのが苦痛で仕方がない。だいたい「うん」とうなずくか、虫の居所が悪ければ聞こえない振りをしている。しかし後味は何とも悪い。

 そのわけは、私が急に足腰は弱るし、体の故障もでて趣味の教室も止め、夫に3度の食事を作るのがしんどくなり、僻(ひが)みっぽくなったこと。一方で夫に愚痴れば弁当やたまには好物の草大福も買ってきてくれるし、42年間、働き続けてくれたからこそ、年金暮らしができるので有り難い気持ちを持たないといけない、という葛藤があるのだ。

 悶(もん)悶(もん)とした日が続くある夜更け。ふと神のお告げのように、以前読んだ本の文章が頭に浮かんだ。

 「朝、夫に笑顔で『行ってらっしゃい!』と、見送りができる妻は良妻である。夫はその一言で一日頑張って働けるものである」と。

 翌朝、私も若い頃にかえったつもりで「行ってらっしゃーい!」と笑顔で夫を見送ってみた。なんと夫は顔を綻(ほころ)ばせた。良かった。私の方も気分がとてもいい。互いに幸せな朝の始まりのようだ。

中根 光子 74 横浜市港北区

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ