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【風を読む】ラグビーを書く 論説副委員長・別府育郎

スコットランド戦後半、トライを決める福岡堅樹=10月13日、横浜・日産スタジアム(山田俊介撮影)
スコットランド戦後半、トライを決める福岡堅樹=10月13日、横浜・日産スタジアム(山田俊介撮影)

 1カ月半にわたって興奮させてくれたラグビーのW杯は、日本を下した南アフリカの優勝で幕を閉じた。

 予想をはるかに上回る素敵(すてき)な大会となった。印象に残る2つのシーンを書く。いずれもネット版の産経ニュースに「ラグビーを書く」と題して長文のコラムとしたものだが、改めて。

 まず、日本がスコットランドを下して悲願の8強入りを果たした試合の、福岡堅樹による40メートルの独走トライである。福岡が速いことは知っている。驚いたのは、トライを挙げた福岡に間髪入れずフッカーの堀江翔太とプロップの稲垣啓太が抱きついたことだ。スクラムを最前列で組む106キロの堀江と116キロの稲垣が福岡を追って40メートルを走り切ったことである。

 フェラーリをブルドーザーが追ったようなものだ。これほど走る第1列の選手は見たことがない。付け加えれば大会に世界ランク1位で入ったアイルランド戦でも同様のシーンはあった。福岡は逃げ切れず、フォローもなく、トライには結びつかなかった。その反省が堀江と稲垣を駆けさせた。スコットランド戦では、堀江に始まるオフロードパスの連続を稲垣が仕留めた。彼らは、新時代の1列目である。

 感動したのは、ニュージーランドがアイルランドに完勝した準々決勝である。「呼吸もできないぐらい」(シュミット監督)打ちのめされたアイルランドだったが、スタンドの大合唱は終始圧倒した。最高潮は試合直後。インタビューエリアに呼ばれた主将のローリー・ベストを大声援が邪魔をする。彼に「引退」を語らせないためだ。

 オールブラックスの選手らは2列縦隊で花道を作って待った。誰も通さない、通らない。それがベストを通す花道だったからだ。インタビューで引退を表明したベストは泣き笑いの表情で黒衣軍の花道を歩み、バックスタンドに向かって愛児3人をピッチに抱き下ろした。厳密にいえば違反行為だが、警備員もそこまで無粋ではない。

 翌日、同じ味の素スタジアムで日本は南アに完敗した。堀江やレメキ、リーチ・マイケルらがバックスタンドから愛児を迎え入れた。前日の前例があるから、警備員も止められない。リーチの子供らが笑顔でピッチを駆けた。映画のエンディングのようだった。

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