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【一筆多論】証拠に基づく政策の重み 長谷川秀行

 RCTは3人が編み出した手法ではないが、貧困削減に採用したのが画期的とされ、世界に浸透した。日本の国際協力機構(JICA)も、バナジー、デュフロ両氏が設立した研究機関などと連携協定を結び、アフリカやインドで子供の学力向上を支援している。

 3氏を含む多くの研究で分かったのは、当たり前とされる施策にも効果がないものが多々あることだ。例えば貧困脱出のため子供の学力を高める施策では、教科書の無償配布は効果が乏しいことが分かった。一定条件で家計に補助金を与えても成績を伸ばせない。

 逆に、学力別でクラス分けして補習授業を行うと効き目が大きかった。JICAがニジェールで行ったRCTでは、学校に補助金を配るだけでは駄目で、資金管理研修などを組み合わせないと高い効果が得られないことが分かった。

 開発経済学では、途上国の貧困解消には手厚い援助が必要だという主張と、援助は自立を妨げるという見方が衝突しがちだが、バナジー氏らがどちらかにくみしているわけではない。それよりも、小さくても実効性のある援助の積み重ねで社会を変えられると説いたことに革新性がある。

 これは貧困政策のみならず先進国の政策にも示唆を与える。日本でも最近、証拠に基づく政策立案(EBPM)が重視されている。大切なのは前例踏襲主義や横並び意識を排し、予算確保で事足れりとする安易な政策を改めることだ。

 バナジー、デュフロ両氏は共著「貧乏人の経済学」(みすず書房)でこう指摘した。「あらゆる問題を同じ一般原理に還元してしまう、怠惰で紋切り型の発想を拒絶しましょう。(中略)まちがえる可能性を受け容れて、あらゆる発想、それも明らかに常識としか思えない発想も含めて厳密な実証試験にかけましょう」。実績が裏打ちする言葉の重みをかみしめたい。(論説副委員長)

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