PR

ニュース コラム

【主張】源氏物語の写本 さらなる研究成果に期待

 平安時代の古典の名作「源氏物語」(54帖)を鎌倉時代の歌人、藤原定家が校訂した写本、「青表紙本(定家本)」のうち、これまで全く知られていなかった新たな1帖が見つかった。

 定家の子孫にあたる冷泉家の「冷泉家時雨亭文庫」が鑑定した。定家本の新出は戦後初で極めて貴重である。

 これまで確認されたのも「花散里」など4帖にすぎず、すべて国の重要文化財だ。すでに重文級との声も高く、今後の研究成果が待たれる。

 源氏物語は平安中期、紫式部が書いた長編である。天皇の子・光源氏を主人公に宮廷生活や貴族の恋愛模様を情緒豊かに描写した。紫式部による原本は現存せず、写本によって後世に伝えられてきたが、写し間違いや書き落としも多かった。

 創作から約200年後の鎌倉初期にはすでに原文は不確かで、定家が古い写本を比較検討して編集し嘉禄元(1225)年に完成させたのが定家本だ。原本に最も近いとされ、現在親しまれる源氏物語は定家本を室町時代に書写した「大島本」が元になっている。

 新出本は三河吉田藩(現在の愛知県)の藩主、大河内家に伝わり、子孫宅で保管されていた。記録では江戸時代の寛保3(1743)年に福岡藩・黒田家から伝わったものという。

 表紙が同じ青表紙であることや題字の筆跡や使われた紙、本の構成などが一致したことなどから定家本と確認された。

 物語の鍵を握る「若紫」の帖だったことも意義深い。光源氏が後に妻となる少女に出会う有名な場面は、多くの絵巻に描かれ、教科書などにも採用されている。

 鑑定した山本淳子・京都先端科学大教授は「物語に差異はないが詳細な部分で違う」と話す。古い時代のどの写本のどの部分を採用したかなど、定家の編集作業に迫ることができるかもしれない。新たな発見にも期待がかかる。

 源氏物語は多言語で訳され、世界的な古典文学として知られる。平成20年11月1日には「紫式部日記」に源氏物語が登場して千年になるのを記念し「古典の日」が制定された。

 まもなく令和最初のその日を迎える。古典に親しむ人が増えるとともに、新発見が研究のはずみとなるよう期待する。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ