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【朝晴れエッセー】冷蔵庫・10月10日

 冷蔵庫がつぶれた。それは仕事で遅くなりながらも、もう食材がない限界だ、と買い物をした日のこと。その日に限り、いつもは買わないアイスや氷まで購入して帰宅。冷蔵庫を開けると、「あれ、なんで?ヤバイ!」

 というのも今年は出費の夏。水回りの工事に始まり、エアコンもつぶれてしまい、買い替えたところだった。

 その日の晩に夫が「しかし、この冷蔵庫は長持ちするなぁ」とつぶやいたのを聞いて、じゃ、そろそろお暇(いとま)、と思ってしまったのだろうか…。

 20年前の冷蔵庫は電気代もかかっていたのかもしれないが、愛着があった。まだ2歳だった長男の手を引き、次男を抱っこして電器屋を巡った日を覚えている。

 「冷凍室は上の方がいい」という店員さんのお勧めで3扉の白い冷蔵庫に決めたのだった。その後生まれた娘と義父母7人の家族の時代を支えてくれた冷蔵庫。にぎやかな食卓も、私の誰にも聞かれてはならぬ愚痴も全部知っている。

 大家族の頃はゆっくりコーヒーなんて飲める日が来るのかなぁ、と思っていたのに、義父が亡くなり、義母の初盆も終えて、あのとき抱っこしていた次男ももうすぐ21歳になる。

 子供たちは仕事や学校、バイトなどで皆がそろって食卓を囲める日は月に数回となった。夫は私との差し飲みにも飽きた、と失礼なことをサラッと言う。

 その後ろで5つも扉を持つ黒光りした冷蔵庫さんが昭和な台所で鎮座しているが、まだお客さんのようで居心地が悪そうに見える。

和田真由美 51 大阪府岸和田市

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