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【記者発】選手は何と戦うのか? 運動部・宝田将志

男子20キロ競歩 水分補給しながらレースする山西利和=ドーハ(共同)
男子20キロ競歩 水分補給しながらレースする山西利和=ドーハ(共同)

 今、カタールの首都・ドーハにいる。陸上の世界選手権を取材するためだ。テレビ中継局のTBSのホームページには「戦え、灼熱(しゃくねつ)と」の文字が躍っているが、本当にドーハは暑い。砂漠気候のため連日、晴天。10月初旬でも最高気温は40度を超える。

 今大会は慣例と異なり、午前中に一切、競技を行わないスケジュールになっている。競技開始は全て日差しが落ち着く夕方以降だ。会場のハリファ国際競技場は空調システムが完備され、グラウンドは適温に保たれているから、トラック種目やフィールド種目に支障はない。

 問題は競歩とマラソンである。スタートは午後11時30分か、同59分の深夜。それでも気温は30度くらいまでしか下がらず、海沿いのコースは湿度が70%台と非常に高い。

 9月27日の女子マラソンでは、厳しいコンディションに耐えられず、約4割もの選手が途中棄権した。自分の肌からじわじわ汗が染み出すのを感じながら、ぐったり倒れた選手が次々と救護用カートで運ばれるのを見るのは気分が良いものではない。ふと「選手は何と戦っているのか。ライバルか? それとも気候か?」と考えてしまった。

 翌28日の男子50キロ競歩で金メダルを獲得した鈴木雄介は、この高温多湿の環境下、平均1キロ5分を切るペースで4時間以上歩き続けた。彼はレース後半に2度、コース脇のトイレに入っている。筋肉のみならず、脱水症状にならないよう給水を取り続けた内臓も大きなダメージを受けていたのだ。

 日本の選手やコーチに聞くと、来年の東京五輪よりも湿度の高いドーハの方が過酷なのではないかとの声が多い。だが、東京五輪のマラソンと競歩は今回のような深夜でなく、早朝のスタート。「日差し」という別のマイナス要因が加わる。勝つためだけでなく、選手の健康を守るためにも万全の暑熱対策は欠かせないだろう。

 取材する側も「暑い、暑い」とぼやいていた世界陸上も最終盤を迎えた。記者は6日に今大会が閉幕した後、体操の世界選手権の取材のためドイツ・シュツットガルトに移動する。予報によると、現地の最低気温は10度を下回るようだ。気持ちも服装もしっかり切り替えて臨みたい。

【プロフィル】宝田将志

 平成13年入社。21年から運動部。ソチ五輪、リオデジャネイロ五輪を現地取材。著書に『四継 2016リオ五輪、彼らの真実』(文芸春秋)。

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