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【直球&曲球】春風亭一之輔 自治体が「ばくち」でもうけようっての?

 私は芸人ですから、道楽で身をもち崩す人に多少の憧れがあります。

 落語に「看板のピン」という…間抜けな男がイカサマばくちをまねして失敗するという滑稽噺(ばなし)がありまして。そこに出てくる元・ばくち打ちの御(ご)隠居は「ばくちというものは『場で朽ちる』といって『葉が朽ちる』のと同じで『実にならない』もんなんだ。ばくちなんてよしちまえ」と若い者を諭します。まぁ言っても聞かないのが落語の世界のやつらで、まんまとしくじるわけです。

 人情噺「文七元結(もっとい)」では、ばくち狂いの男のひとり娘が父親の借金を返すために自ら吉原に身を沈めようとします。それを知った遊郭の女将(おかみ)が男を懇々と諭し、ばくちをやめる条件で金を貸してあげる…。まだまだ噺(はなし)は続くのですが、とにかくこの女将の説教が聴かせどころ。「ばくちはよしなよ」といってもやめられないのが人間で、その弱さを描くのが落語なんでしょうが。

 「道楽」って常に「うしろめたさ」があるのがいいんだよな。当人はいけないと思っててもつい手が出てしまう。そこにドラマが生まれる。だから健全なばくちなんてどこにもないわけです。そんなもの面白くない。必ず誰かが勝って誰かが負ける、その負けのおかげでばくち場が回る。どうかすると負けた奴(やつ)は家族もろとも路頭に迷う。「文七元結」の長兵衛みたいに。それは仕方ないことです。

 横浜市が「カジノ誘致」という、ばくちをしようとしています。落語でなく、現実の世界で自治体が、「ばくちで、もうけようという大ばくち」をしようとしてるって、ちょっとその噺はもう笑えないなあ。たとえカジノで税収が上がったとしても、人が不幸になった金で生きていくのを子供たちになんて説明してよいものか。

 お上が「うしろめたいこと」でもうけちゃダメだよ。市井の者がコソコソやるからいーんであって(いや、よかないか)。ある先輩が言ってました。「ばくちに凝ると目つきが悪くなる」って。どっかの市長もちょっと悪くなりかけてるんじゃないかな。

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【プロフィル】春風亭一之輔

 しゅんぷうてい・いちのすけ 落語家。昭和53年、千葉県生まれ。日大芸術学部卒。平成13年、春風亭一朝に入門して朝左久、二つ目昇進時に一之輔を名乗る。24年、21人抜きで真打ちに抜擢(ばってき)。古典落語の滑稽噺を中心に、人情噺、新作など持ちネタは200以上。

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