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【風を読む】胸が痛い 論説副委員長・別府育郎

車両を降りて碑文谷警察署に入る船戸結愛ちゃんの母親、優里被告(中央)=2018年6月6日、東京都目黒区(三尾郁恵撮影)
車両を降りて碑文谷警察署に入る船戸結愛ちゃんの母親、優里被告(中央)=2018年6月6日、東京都目黒区(三尾郁恵撮影)

 胸が痛むとは、とても悲しい思いをすること、ひどく心苦しいことなどを指すとされるが、本当に痛い。締め付けられるように胸が痛い。

 「もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします もうおなじことはしません ゆるして」「あしたのあさはきょうみたいにやるんじゃなくて パパとママにやくそくだから パパとママにみせるってきもちでやるぞ えいえいおー おやくそくだから おねがいね たのむからね」

 両親の虐待を受けて亡くなった東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃんがノートに書き残した言葉を東京地裁の公判で検察側が読み上げた。わずか5歳の女児が残した言葉だ。

 保護責任者遺棄致死罪に問われた母親の優里被告の裁判員裁判である。ノートだけではない。結愛ちゃんの部屋には大量の貼り紙があった。「めざましどけいをはやくとめる」「いきがくるしくなるまでうんどうをする」。血痕が残る貼り紙もあったという。

 母の悔恨に、嘘はなかったろう。最終意見陳述では「結愛を愛していたのに心も体もぼろぼろにして死なせてしまったことへの罰はしっかりと受けたい」と述べた。遅すぎるが。

 検察側は「母親に助けてもらえなかった絶望や苦痛は察するに余りある」として懲役11年を求刑した。弁護側は「被告への(夫の)虐待にも目を向けてほしい」と訴え、懲役5年が相当とした。判決は17日に言い渡される。

 結愛ちゃんの事件後も、虐待により命を失う子供は後を絶たない。千葉県野田市の栗原心愛(みあ)さん。札幌市の池田詩梨(ことり)ちゃん。鹿児島県出水市の大塚璃愛来(りあら)ちゃん。どの命にも、救えたはずの機会はあった。どうすれば彼女らを助けることができたか。

 ヒントは公判にあった。証人として出廷した児童相談所の担当職員は「結愛ちゃんもお母さんも救いたかった」「児相は子や親の力になりたいと思っている。そのことを忘れないで」と涙ながらに訴えた。厳しいようだが、誤りはここにある。

 子の命を守ることを優先すべきだった。「支援」と「介入」。相反するどちらも大事な仕事が、1人の職員の裁量に任される。増員を待っていられない現状が生んだ悲劇ともいえる。

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