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【スポーツ茶論】畳の上の中東戦争 黒沢潤

柔道の世界選手権男子81キロ級準決勝で、ベルギー選手(下)と対戦するイラン代表のサイード・モラエイ=28日、東京・日本武道館
柔道の世界選手権男子81キロ級準決勝で、ベルギー選手(下)と対戦するイラン代表のサイード・モラエイ=28日、東京・日本武道館

 イスラエルのエルサレムで17年前、若い兵士から、パレスチナ過激派の自爆テロに遭遇した経験談を聞いたことがある。彼がレストランの奥で食事を注文すると、入り口付近で突如、爆弾が炸裂(さくれつ)。白い煙がスーッと店内奥に流れ込むと同時に、悲鳴が響き渡った。数秒後、われに返り、前に座っている女性を見ると、首から上が失われているのに、片手にビールジョッキを持ったままだったという。

 彼は「犯人が腹付近に仕込んだ大量のクギや鉄片が飛び散り、イスラエル人女性の首を切断したのだ」と語った。

 パレスチナ自治区ガザでは、数十キロ離れた旧宅の敷地(現在はイスラエル領土)の「登記簿謄本」を憤りながら見せるパレスチナ難民の老人とも出会った。「こんな占領状況はおかしくないか?」。彼の目は憎悪に満ちていた。

 ガザには今も、イランなどイスラエルの敵国から、無数の密輸トンネルを経由し大量の武器が送られている。イスラエルを攻撃するためだ。一方、イスラエルは空爆でトンネルをたびたび破壊。筆者はトンネルの取材後、付近が空爆されるという恐ろしい経験をしただけに、イスラム諸国側とイスラエルとの対立の激しさが身に染みて分かる。

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 日本武道館で先月、柔道世界選手権男子81キロ級をめぐり起きた“事件”は「畳の上の中東戦争」といえるだろう。

 日本伝統の柔道着をスマートに着こなすイランの英雄、サイード・モラエイは準決勝前、いずれ優勝決定戦で対戦する可能性のあったイスラエルの英雄、サギ・ムキとの試合を放棄するよう母国政府から圧力がかかったという。

 ムキのコーチは1995年の世界選手権決勝で古賀稔彦に敗れており、世界一が師弟の悲願。日本で有名なモラエイも連覇を狙った。だが、母国政府の意向を尊重するコーチ陣を尻目に準決勝に臨んだモラエイは精神的動揺のせいか敗北。決勝にも進めず家族を残し、柔道連盟の支援を受ける形でドイツに逃れた。

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