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【朝晴れエッセー】最後のゴルフ・9月12日

 父とゴルフに出た。私が学生の頃以来だから50年ぶりである。父に連れられての初めてのコースは6月で緑が美しく、こんなに気持ちのいい場所があるのかと感動した。あれから私はゴルフの虜(とりこ)になり、ゴルフとともに人生を歩むことになったのだ。

 父はその時、指導者として、ルールやマナーにも厳しかった。人に対する気遣いは面倒ではあるが、何か人としての誇りを感じることができた。私の人格形成の一役を担ってくれたかもしれない。

 以来父といつも仕事や家庭には一緒にいたが、なぜかゴルフの同伴はしたことがなかった。もう父も90歳を超えて、足腰が弱り、プレーが難しくなった。「これが最初で最後かな?」、1カ月ほど前に私がそう思って誘ったのだ。

 相変わらず器用とはいえないフォームで打っている。ただパターのアドレスはあの時と同じだ。途中、息が切れ、足を引きずる姿は時の流れを感じた。偶然触った腕の細さは、あの時の面影が消えていた。

 仕事や人生のすべてで父の背を見てここまで来た。良い面悪い面いろいろあった。が、やはり最後は感謝しないといけないだろう。自分勝手で何とわがままだと何度思ったかしれないが、やはり感謝だろう。

 コースの途中、一番の難所に来た。ここを乗り切ればラウンドできるはずと思っていた。無情にも父の球は、高低差のある谷に落ちていった。「もうここまでや」。息も絶え絶えギブアップした。大丈夫だろうかとのぞき込んだその顔は、満足したようにほほ笑んでいた。

坂井 幸博 69 香川県高松市

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