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【東京特派員】浮名ばかりは盗めない 湯浅博

山田五十鈴(女優)「たぬき」の立花家橘之助の役を演じ、芸に増々磨きがかかる
山田五十鈴(女優)「たぬき」の立花家橘之助の役を演じ、芸に増々磨きがかかる

 伝説の女芸人、立花家橘之助(きつのすけ)といえば、先年亡くなった女優、山田五十鈴が演じた舞台の代表作「たぬき」のモデルであった。その美貌と三味線の凄腕(すごうで)で、明治、大正期に一世を風靡(ふうび)した。

 この初代橘之助は明治元年に生まれ、5歳で高座に上がり、8歳で真打ちに昇進して浮世節家元として名をはせた。男天下の寄席の世界に芸一本で君臨し、「女大名」の異名を持つほどの人気者だった。彼女が男名にこだわったのは、堂々、噺家(はなしか)たちと渡り合うためだった。

 浮世節とは、はやり唄(うた)の中に長唄、清元、常磐津、新内などの伝統芸を取り入れ、橘之助の天分をもって作りえた芸術であった。

 つい先日のこと。その初代橘之助がいまによみがえったような空気感がそこにあった。言論人や防衛関係者が集った一夜の席でのことである。2代目の立花家橘之助(58)は漫談で笑いをとり、三味線の速弾き、終わりの花柳流の踊りではため息が漏れていた。

 「川の中では てけてんばか囃子 うろうろ船に影芝居 屋形屋根船 ある中で おーい 筏(いかだ)だ筏だ筏だ~ 面舵(おもかじ)~」

 「両国風景」の一席が三味線の音に乗ってほとばしる。これが、あの名跡を82年ぶりに継いだ2代目の芸かと舌を巻いた。ご本人はリズムの類似性から、これを「和風ラップ」と称するが、なに、ニューヨーク発の方が「洋風浮世節」ではないか。

 先代が得意の「たぬき」にも、「昔 昔 その昔 ばば喰ったじじの狸(たぬき)汁 縁の下やの骨までも 広尾の原の狸そば のびた鼻毛をほおっかむり 狸長屋を えええ そそり節…」と、似た言葉を連ねて韻を踏む。

 2代目橘之助は、本名を茂木康子という。和洋女子短大を卒業すると女優を目指して俳優養成所にいるときに、亡くなった落語の三遊亭圓歌に出会った。

 康子は浅草生まれの浅草育ち。芸者遊びの好きな祖父の小唄に、祖母の三味線を聞きながら育った。母は長唄の杵屋志津和だし、本人は鳳千佐の芸名をもつ花柳流日本舞踊の名取である。

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