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【一筆多論】剣豪作家が見た東京五輪 沢辺隆雄

 秋は3連休が多い。論説委員室でも数人いるデスク役の副委員長が交代で出社し、突発事件などに備えて留守番する。休みが多いのも困りもの-などと書くと、働き方改革の昨今、怒られるか。

 休日の当番表をつくりながら10月の「体育の日」は来年から「スポーツの日」に名称が変わるというのにも改めて気がついた。もともと10月10日が「体育の日」で昭和39(1964)年の東京五輪の開会式の日にちなむのを知らない若い世代も増えているよう。

 そういう私も前回東京五輪は2歳だったので記憶がない。来年の五輪・パラリンピックまで1年を切り、『東京オリンピック 文学者の見た世紀の祭典』(講談社文芸文庫)を改めて手に取った。大会期間中を中心に、新聞や雑誌などに掲載された文学者のルポや随筆、評論などを集めたものだ。三島由紀夫、井上靖、遠藤周作、阿川弘之、有吉佐和子ら、そうそうたる作家の名が並び、ページをめくるだけで楽しい。

 その中に剣豪小説家の柔道観戦記があった。「眠り狂四郎」で知られる柴田錬三郎が「思わず願った奇蹟(きせき)」という題で、お家芸の柔道無差別級で神永昭夫がオランダのヘーシンクに敗れた、たたかいを書いた。10月24日の産経新聞夕刊に掲載されたものだ。

 「剣豪作家のくせに、武術というものを、息をつめて見たことは、これまでに一度もなかった」と始まる。「のんびり」した気分で見ていた作家は、準決勝までのヘーシンクの圧倒的強さを見て、冷静ではいられなくなる。神永はドイツのグラーンを体落としで破り決勝に進むが、隣で観戦していた柔道家らしい老人は「時間がかかりすぎたな」とつぶやく…。

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