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【朝晴れエッセー】最期のピース・9月7日

 4歳下の妹が、夫と夫の両親を残し、早朝の福島から一人軽自動車で、地図を頼りに走り続けて神奈川の実家へ帰ってきたあの日から7年たつんだなぁ…。

 程なくして離婚が成立した妹は、80代となる両親との3人の生活をスタートさせた。年老いた両親の家事を手伝いながら、仕事も決まり学生時代の旧友との再会を楽しんだりしていた妹が体調不良で婦人科を受診したその日に、神奈川県立がんセンターへ入院する日が決まった。

 新病院として開院したがんセンターへ再入院が決まったときも、緩和ケア病棟への移動のときも妹が亡くなるなんて1ミリも思っていなかった私に妹が言った。

 「私が、この先もし管につながれたベッドで意識がない状態になったとしたら、周りで皆が泣いているのはイヤ! きっと私は苦しみから解放されて最期を迎えると思うから、だからお姉さんに私の指を『ピース』ってさせてほしいんだけど」と…。

 わが家での在宅介護をスタートさせてから約1カ月後、妹が息を引き取った瞬間、頭上に苦しみから解放された妹の視線を強く感じた私は、「ハッ」と思ったと同時に妹の右手を取りピースをさせた。

 『お姉さん約束を果たしたからね』

 私は頭上の妹に心の声をかけた。頭上からの視線を強く感じたあの感覚は、後にも先にもあの日だけ。

 妹が逝って今年の秋で5年になる。

新井 玲子 59 神奈川県愛川町

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