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【社説検証】年金の財政検証 産経「先食いは許されない」

公的年金の財政検証結果が報告された社会保障審議会の年金部会=8月27日午後、東京都港区
公的年金の財政検証結果が報告された社会保障審議会の年金部会=8月27日午後、東京都港区

 ■「制度維持へ改革を」と各紙

 厚生労働省が公的年金の長期見通しを示す年金財政の検証結果を公表し、経済・社会の変化に応じて6つのシナリオを示した。少子高齢化に伴って受け取る年金の水準低下は避けられないが、経済が堅調に成長して高齢者や女性の労働参加が進めば、公的年金制度は将来にわたって維持できるとした。

 65歳で受け取りを始める年金の給付水準は、現役世代の手取り収入と比べた「所得代替率」で示される。政府はこれが50%を割り込まないことを目標としている。今年度は61・7%だが、標準的なケースで推移しても人口減少や高齢化の影響で給付水準は徐々に低下し、約30年後には51・9~50・8%にまで下がると試算している。

 産経は「将来世代の給付水準が現在の世代より大幅に目減りする現実を直視しなければならない」と指摘した。そのうえで「子や孫の世代に安心できる制度を手渡すためには、負担と給付のありようを抜本的に見直す必要があろう」と年金改革に取り組むように訴えた。

 読売は「政府が約束した『50%超』という目標はクリアしている。ただ、経済が停滞し、高齢者や女性の就労が進まない想定では、40(2040)年代に50%を下回る恐れがある。将来世代には楽観できない内容だ」と強調し、「支え手を増やし、制度の基盤を強化することが大切である」としてパートなどの非正規労働者に対して厚生年金を適用拡大するように求めた。

 朝日も「何より急ぐべきは、非正規雇用で働く人などが厚生年金に加入しやすくすることだろう」と論考した。そして「本人が手厚い年金を受けられるようになるだけでなく、基礎年金の水準低下を抑える効果があることが、財政検証のオプション試算でも示されている」とした。

 財政検証は、経済成長や賃金伸び率など一定の前提の下でのシナリオを示している。そうした前提を批判したのは毎日だ。「中間的ケースでたとえば実質賃金上昇率を1・1%と想定しているが、17年度までの4カ年の実績は平均でマイナス0・6%である」と示したうえで、「安倍政権が経済再生に注力した結果がこの数字である。なのに、これを上回る上昇率を前提に置くことは妥当なのだろうか」と難じた。

 また、日経は「50%の所得代替率を確保する対象として『夫が会社員を40年、妻は一度も働きに出たことがない主婦』という高度成長期に多数派だった夫婦像をモデル世帯にするやり方は、時代にそぐわなくなりつつある」と疑問を提示し、「単身や共働きなど多様化する世帯像を前提にした見せ方を工夫してほしい」と求めた。

 一方、少子化や長寿化などに合わせて年金の給付水準を抑える「マクロ経済スライド」にも注文が相次いだ。これは物価・賃金の上昇局面でしか発動されず、制度が導入された約15年前から3回分しか発動されていないからだ。

 産経は「抑制が不十分なら、しわ寄せは将来世代にいく。子や孫の給付を先食いすることは許されまい。物価下落時でも給付を適切に調整できるよう検討を急ぐべきだ」と提案した。読売も「年金制度を維持するには、給付の抑制も求められる。年金水準を徐々に下げる『マクロ経済スライド』の機能強化が重要である」と強調した。

 「老後に2千万円が不足する」とした金融庁審議会の報告書を発端に老後不安が高まっている。公的年金は大切だが、それだけで老後の暮らしをすべて支えることができないのも現実だろう。安心できる老後を迎えるため、国民に長期的な資産形成を促す取り組みが何より欠かせない。年金不信や老後不安ばかりを煽(あお)り、そうした建設的な議論を封じる風潮は、国民のためにならない。(井伊重之)

 ■年金の財政検証に関する主な社説

【産経】

 ・「人生百年」支える制度を/現実見据え負担を分かち合え(8月29日付)

【朝日】

 ・不安に応える改革を(28日付)

【毎日】

 ・見通しに甘さはないのか(28日付)

【読売】

 ・安定運営のため不断の改革を(28日付)

【日経】

 ・年金再改革を政治に迫る財政検証(28日付)

【東京】

 ・安心の底上げを図れ(28日付)

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