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【風を読む】祭りに見る近未来日本の縮図 論説副委員長・佐々木類

 祭りの後の寂しさも癒え、小さな秋の気配を感じる季節となった。今年もまた、日本の夏を彩る祭りが各地で開催された。博多祗園山笠もあれば、青森ねぶたなど東北三大祭りもあった。テレビで見ると行った気分になる。茶の間で日本の夏を楽しんだ。

 一方で物足りなさも感じ、8月17日夕、埼玉県川口市で開かれた盆踊り大会を取材を兼ねて見に行った。入れ墨をした人や北朝鮮の国旗をあしらったTシャツを着た人もいた。

 緊張の夏である。

 JR京浜東北線蕨(わらび)駅から徒歩5分のところに会場はあった。1号棟から15号棟まで約5000人が住む芝園団地だ。昭和53年に日本住宅公団(現在のUR都市機構)が建てた賃貸住宅でその大半が中国人だ。平成27年11月、川口市芝園町の人口は、初めて外国人住民が日本人を上回った。

 櫓(やぐら)の周りで自治会の婦人らが盆踊りの輪をつくる。それを屋台で買った羊肉の串焼きを食べながら、外国人住民らが物珍しげに眺めていた。中国人の子供らが一部、浴衣を着て見よう見まねで踊っていた。大人はといえば、櫓の設営には参加しないが、高額商品の当たる抽選会には並んでいた。

 自治会長の真下徹也さん(74)によると、ゴミの分別収集は問題なくなったが、深夜早朝の話し声による騒音や階段、踊り場での糞尿(ふんにょう)、トイレの水を流さないことによる住居内の異臭は、減ってはいるがなくならないという。役員の一人は「課題の多い団地であることは間違いない。日本人と外国人は共存していても、共生までは至っていない」と語り、“静かなる分断”の解消に頭を悩ます。

 祭りの司会で通訳をしていた役員の楊思維さん(29)は、「自治会に入ろうと思う中国人はいませんよ。母国ではそんな習慣はありませんから。でも入って仲良くしてほしいですね」と語る。楊さんは、中国四川省出身で、寧波大、埼玉大院を卒業・修了して日本の専門商社に勤務する。

 芝園団地で見た光景は一見、自分が幼少期を過ごした社宅に雰囲気が似ていた。子供や妊婦が多く活況を呈していた。違うのは、その多くが外国人だったということだ。近未来の日本の縮図をそこに見た気がした。

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