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【主張】エースの登板回避 選手泣かせぬ日程改革を

 もう一度投げる姿を見たかった。これが多くの高校野球ファンが抱いた思いではないか。

 高校球史で最速となる163キロを記録し、「令和の怪物」と呼ばれる岩手・大船渡高の3年生エース、佐々木朗希(ろうき)投手が甲子園出場を懸けた25日の岩手大会決勝で登板の機会もなく、同高は敗退した。

 佐々木投手は秋のプロ野球ドラフトで1位指名が期待される大型右腕だ。米大リーグのスカウトも注目している。129球で完封勝ちした24日の準決勝を含め、今夏は10日足らずのうちに4試合で計435球を投げていた。

 「過酷な状況での連投が、若者の心身を一段上に引き上げる」という精神論が聞かれ、「選手の将来を思えば連投はとんでもない」と憂慮の声も聞かれる。

 国保陽平監督は連投による故障を恐れ、登板を回避した。豊かな将来性を思っての選択ならやむを得ない面はある。難しい判断だったろう。

 プロを目指す球児と甲子園を集大成と位置づける球児では、「夏」の意味が異なる。その起用については、指導者が選手と日頃から対話を重ねた上で、責任ある判断をしなければならない。

 高校野球はファンに育てられた文化でもある。特に子供たちは甲子園のヒーローに夢を重ね、野球文化の新たな担い手となってきた。佐々木投手が挑戦の機会もないまま道を閉ざされた現実は、野球文化にとっても痛手だろう。

 「平成の怪物」と呼ばれた神奈川・横浜高の松坂大輔(現中日)は、平成10年夏の甲子園準々決勝で、延長17回、250球を一人で投げた。佐々木投手の肩肘がどんな状態だったか定かではないが、「投げたい気持ちはあった」と語っている。指導者は選手の限界を見極める目も求められている。

 ただし、賛否の声が監督だけに集まる構図はおかしい。故障のリスクが起用に影響したのなら、過密ぶりが問題視されて久しい大会日程がまず責められるべきだ。

 近年は準々決勝と準決勝の間に休養日をはさむようになり、投球数制限の検討も行われているが、十分ではない。短期間で多くの試合を消化する大会運営のあり方は、球児のプレーの権利を奪っていないか。主催者側の責任を棚上げにする議論は、問題の本質を見失っている。

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