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【論壇時評】8月号 「8050問題」と海外出羽守 文化部・磨井慎吾

参院選一夜明けの会見で記者団の質問に答える安倍晋三首相=22日、東京・永田町の自民党本部(春名中撮影)
参院選一夜明けの会見で記者団の質問に答える安倍晋三首相=22日、東京・永田町の自民党本部(春名中撮影)

 参院選が終わった。与党は改選過半数を確保する一応の勝利を収めて引き続き安定的な政権運営を可能にしたものの、憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を「改憲勢力」で占めるには至らなかった。当面の政治日程としては政権交代の可能性も憲法改正の発議も遠ざかり、令和初年の日本には、どこか昭和戦後の55年体制を思わせる膠着(こうちゃく)感が漂っている。

 ただ昭和戦後と状況が異なるのは、平成期に長く続いた経済停滞によって社会的余裕を失った現在の日本が、いよいよ本格的に人口減少、少子高齢化という衰退局面に向き合わざるを得なくなっていることだ。その象徴となるのが、すでに後期高齢者となった80代の親が50代にさしかかった中高年引きこもりの子供の面倒を見る「8050(はちまるごーまる)問題」だろう。今月号の論壇誌では、5~6月に相次ぎ発生した川崎市の引きこもり傾向の男による無差別児童殺傷事件、および東京都練馬区での元農林水産省事務次官による引きこもりの長男殺害事件を受けて、複数の媒体がこの社会問題を取り上げているのが目立った。

 文芸春秋は特集「『家族という病』を治す」を組んでいる。橋下徹「僕は元農水次官を責められない」や橘玲(あきら)「『リベラル社会』が男たちを追い詰める」などの刺激的な論争提起が並ぶ中で、先の2事件を直接扱っているわけではないものの、問題の背景を実感的に理解するための貴重な補助線を与えてくれるのがノンフィクション作家の広野真嗣のルポ「『就職氷河期世代』孤独と悲哀の事件簿」。昨年に福岡市で起きた著名ブロガー刺殺事件および九州大元大学院生の焼身自殺という2事件、加えて学界で将来を嘱望されながらも職を得られず3年前に自ら命を絶った日本思想史研究者の女性のケースをそれぞれ取材することで、現在の40代前半を中心とした世代が直面した平成中期の「就職氷河期」が、いかに当時の前途有為な若者たちのチャンスを奪って社会的、経済的な窮状に追い込み、ひいては今日の日本社会に暗い影を落としているかを見いだしていく。

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