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【環球異見】台湾総統選

台湾の総統選で中国国民党候補に選ばれ、記者会見する韓国瑜高雄市長(右)=15日、台北(AP)
台湾の総統選で中国国民党候補に選ばれ、記者会見する韓国瑜高雄市長(右)=15日、台北(AP)

 台湾の野党、中国国民党は予備選の結果、来年1月の総統選での党公認候補に韓国瑜(かん・こくゆ)高雄市長を選出した。これで二大政党の候補が出そろい、再選を目指す民主進歩党の蔡英文総統との選挙戦は、中国との距離感が大きな争点になる見込みだ。民進党寄りの台湾メディアは「親中派と台湾護持派の対決」と断じ、中国の官製メディアは親中派とされる韓氏を評価しつつも、「一国二制度」の拒否姿勢を問題視した。

 □台湾 自由時報

 ■親中派か台湾護持派の選択

 台湾の総統選は、野党、中国国民党の候補が党派色の強い韓国瑜高雄市長に決まったことで、中国との距離感を軸とする伝統的な二大政党対決の色彩が濃厚になった。再選を目指す与党、民主進歩党の蔡英文総統は、国民党を中国の「代理人」と位置付け、総統選の構図を台湾内部の争いではなく、自らと中国との戦いに仕立てることを目指している。

 民進党寄りの自由時報は18日付社説で、「今回の選挙の対決は必然的に両岸(中台)の議題に集中する。統一、独立の争いが大局を左右するだろう」と今後の論争の行方を見通した。社説は、複数の海外英字メディアが国民党の韓氏を「ポピュリストの親中派」と表現しているとし、「台湾の来年の選挙は親中派と台湾護持派の選択、対決になった」と断じた。

 同紙は17日付の社説でも、韓氏が香港の抗議デモについて「よく知らない」と発言したことを間接的に引用し、総統選は、親米派の蔡氏か親中派の韓氏かの選択である以上に「民主主義と反民主主義の対決だ」とまで踏み込んだ。

 台湾の政治大選挙研究センターが行っている自己認識調査で、自らを「台湾人」だとする人は2014年の60・6%をピークに減少していたが、今年6月の調査で前年(54・5%)から56・9%と増加に転じた。調査は香港の抗議デモが拡大する前だが、中国の習近平国家主席が今年1月に「一国二制度」による台湾統一の具体化に言及して以降、台湾世論で高まる中国への警戒感を反映したものとみられる。その意味で、蔡氏やそれを支持する自由時報の論調は目下、米中対立の下で台湾を取り巻く国際環境を生かし、総統選の争点設定を有利に進めているといえる。

 一方、中国寄りの論調で知られる中国時報は、一貫して韓氏を支持してきた。同紙は国民党の予備選で、鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘(かく・たいめい)前会長が敗退した翌16日付の評論で、郭氏が多額の個人資産を投入して大規模な宣伝をしたことに触れ、「中華民国(台湾)は金銭では買えないことを実証した」と揶揄(やゆ)した。国民党寄りの聯合報は18日付の社説で、韓氏の勝因は「基層の庶民の堅実な支持を得たことだ」とし、「甘く見てはいけない」とクギを刺した。

 同紙によれば、「庶民」を強調する韓氏の絶大な人気「韓流現象」は、中国大陸出身者と台湾出身者の対立や政党の違い、階級や職業も乗り越えた「群衆の直感的な結集力」によるもので、国民党の伝統的な「エリート統治」とも異なる。韓氏の支持者は民進党の「理屈っぽい政治」に聞く耳を持たず、政権を倒す「強い意志を持っている」。このため、これまでの総統選と異なり「民衆は彼らと苦楽をともにする人物を推す」のだとする。総統選の争点を台湾内部の社会的、経済的な格差だと見る論調だ。

 メディアに党派色が強く表れる台湾では、総統選の争点をどう設定するのかという論争自体が、駆け引きの対象となっている。(台北 田中靖人)

 □中国 環球時報(英語版)

 ■二面性を理解し利口に扱え

 台湾の次期総統選に向けて、中国当局は「一つの中国」原則を認めない与党、民主進歩党と蔡英文総統を下野させるために外交・軍事・経済的な圧力を強めてきた。ただ中国メディアや識者は、国民党候補に選出された韓国瑜高雄市長が中台関係を重視する姿勢を評価しているものの、中国が求める「一国二制度」の受け入れを韓氏が拒否したことにも言及した。

 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(英語版)は16日付の論評で、韓氏について「強い反中姿勢をとっている民進党とは異なり、現実的な両岸(中台)政策や人々の暮らしの向上などによって多くの熱烈な支持者を獲得している」と評価する楊丹志・中国社会科学院研究員のコメントを紹介した。

 中国当局は今年3月、韓氏を香港とマカオ、広東省、福建省に招き、広東省では国務院(政府)台湾事務弁公室の劉結一(りゅう・けついち)主任(閣僚級)が面会するなど異例の厚遇ぶりをみせている。

 ただ楊氏は「しかしながら、中国本土は台湾の政治家たちの二面性ある振る舞いを明確に理解し、冷静かつ利口なやり方で彼らを扱わなければならない」とも論じた。

 論評は続けて韓氏が6月に「私のしかばねを越えないかぎり、絶対に台湾で一国二制度は実現しない」と発言したことに触れ、不満をにじませた。

 一方、中国メディアの蔡氏批判は強まる一方だ。中国社会科学院の謝楠研究員は17日付の同紙への寄稿で、蔡総統が外交関係のあるカリブ海諸国4カ国を訪問中であることに触れ、次期総統選に出馬する蔡氏にとって最も重要なのは「経由地の米国でどれだけの支持を集められるかだ」と指摘した。

 謝氏は、過去3年間の蔡政権下で台湾は生活水準がほとんど向上していないと批判し、蔡氏ができることは「安全保障と外交のカードをもてあそぶこと」しかないと指弾。厳しい状況に直面している蔡氏は「米政権との関係強化を通じて自らの業績を誇示する」ために、米国に一層すり寄ろうとしていると主張した。(北京 西見由章)

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