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【朝晴れエッセー】お母ちゃん、ハイどうぞ!・7月13日

 「ばあば、ちょっと来て」。幼稚園バスを降りた孫娘が私を呼んだ。「お母ちゃんにはないしょのお話やねん。バスの中からかわいい白いお花見つけたの。そのお花、お母ちゃんに『ハイどうぞ!』したいの。ばあば、一緒に探して」と耳元で秘密の話をしてくれた。私は指でオッケーを作り、2人目に授乳中の娘に「ちょっと散歩してくるから」と告げ、2人でバスが通った道を後戻りした。

 「ゆずちゃんのお家の近くやった」「この辺やったかな」などとバスの窓から見えた花を探してどんどん坂を下った。丁字路まで来ると、「ここでゆずちゃんは降りて、バイバイして…」と、入園間もないときであったが、孫の頭の中では、降りた自分の家の前からここまで坂を下ってきたようだった。大通りに出て、通ったであろうバス道を2人で眺め、道端に咲く花を探した。家を出てから1時間近くが過ぎていた。長い散歩に娘は心配していただろう。

 「守山のばあばには、見つけられへん。ないしょなのにごめんね。ばあばが、お母ちゃんに頼んでみるから」と提案した。娘は孫を自転車の後ろに乗せて坂を下った。

 しばらくすると玄関が開き、かわいい花を手にした孫が、ダダダダッと走ってきて「ばあば、水! 水!」と空き容器を差し出した。私は、急いで水を入れて渡した。ないしょにはできなかったが、満面の笑みを浮かべて、「ほら、かわいいでしょう。お母ちゃん、ハイどうぞ!」。年少の孫娘の思いがかなった一瞬だった。

 うっすらピンクがかったハルジオンが貧乏草と呼ばれていることは言わなかった。

小林珠美(67) 滋賀県守山市

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