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ニュース コラム

【記者発】人を見極めることは難しい 政治部・田中一世

 新米のころ、勤務地の兵庫県で女性が殺害された。取材で訪ねた被害者宅の玄関先で短い時間ながら、夫に話を聞いた。悲しみに暮れてむせび泣く姿に心を揺さぶられた。

 遺族の悲しみを報じることが記者の役割であるはずだと思い、記事を書いた。それなのに、理由は定かでないが上司にボツにされた。確かに半人前の記者とはいえ、上司に思いを理解されないことが残念で、かなり悪態をついた覚えがある。

 その後、事件は私が予想しなかった方向に進んだ。捜査線上に浮かんだ容疑者は夫だった。いや、まさか-と耳を疑った。夫は数週間後に逮捕された。取材を終え、職場に戻るのが嫌でたまらなかったことも覚えている。

 おかしいと思わなかったのかと上司に問われたが、1度話を聞いただけでは分からなかった。夫が自供した犯行動機は極めて身勝手で、後に有罪判決を受けた。記憶から消したい出来事である。

 弁解するわけではない。人物を見極めるのはとても難しい。悲痛な事件と比べてはいけないが、政治の取材でも同じことがいえる。

 取材を重ね、飲食などを共にすると、見方が変わっていく議員は少なくない。策謀にばかりたけた古いタイプの政治家だと思っていた自民党の幹部と付き合ってみたら、黙って後輩の泥をかぶる姿が見え、一転して魅了されたこともある。

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