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ニュース コラム

【日曜に書く】田辺聖子さんと品の良さ 論説委員・山上直子

 若い女性だろうか、泣いている後ろを通ると道をあけてくれた。自分の感情に浸りすぎず周囲を気遣うことができる、品のいい人の姿である。

井上ひさしさんも称賛

 田辺さんといえば、恋愛小説や軽妙なエッセー、源氏物語の現代語訳などで知られるが、この評伝はまた違う。

 副題「川柳作家・岸本水府とその時代」にあるように、水府の生涯と同時に大勢の川柳家の姿も描いて、近代川柳の全体像を浮かび上がらせた。傑作と高く評価され、読売文学賞や泉鏡花文学賞などを受賞している。

 井上ひさしさんも「近代川柳の全体図を手に入れた。秀句三千をちりばめた近代川柳史の決定版を得たのである。これはひとつの文学的壮挙だ」(読売文学賞選評から)と激賞した。

 執筆動機について田辺さんは、卑近な日常詠が主流の川柳は誤解されやすく、水府らが川柳を「近代文学」たらしめんとした「川柳革新運動」に共鳴し、彼らの佳句を言挙げしたかった、と明かしている。

 その原点は、江戸時代の川柳集「誹風柳多留(はいふうやなぎだる)」が好きで、先の大戦の空襲下でも、その文庫本をかばんに忍ばせていたほど川柳好きだったことだ。なのに鑑賞専門で、自分では作らないのも田辺さんらしい。

近代大阪の華を味わう

 田辺作品の大作で、川柳の決定版-という以外の楽しみ方をぜひ紹介したい。丸谷才一が毎日新聞に寄せた書評で同著の持つ12の性格というのを指摘したが、その11番目「大阪人中心の日本近代史」の魅力だ。

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