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【日曜に書く】田辺聖子さんと品の良さ 論説委員・山上直子

著書が並ぶ田辺聖子文学館内を見てまわる田辺聖子さん=平成19年6月、大阪府東大阪市
著書が並ぶ田辺聖子文学館内を見てまわる田辺聖子さん=平成19年6月、大阪府東大阪市

 20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)の幕が下り、大阪に日常が戻りつつある。ほっと一息つく一方で、せっかくの機会、浪花の町の風情をもう少し皆さんに味わっていただきたかったとも思う。雨の道頓堀は、よろしいのに。

 そう思い付いたのは、国文学者の中西進さんが、先日亡くなった作家・田辺聖子さんの追悼文で、その著作『道頓堀の雨に別れて以来なり』を紹介していたからだ。

 川柳を愛した田辺さんが情熱をかけて書き上げた大阪の川柳作家・岸本水府(すいふ)(1892~1965年)の伝記小説である。

ふんわりした手ざわり

 さらにさかのぼると、かつての僚紙・大阪新聞(平成14年休刊)でも、中西さんはこう書いていた。

 「雨に濡れる道頓堀の情緒がわからなければ理解できない題名だろう。限りなく庶民の町の中に埋没し彼らと肌を合わせることから川柳を生んでいった水府の姿に、道頓堀の雨はよく似合う」(平成12年5月24日発行「澪標」から)

 新元号「令和」の考案者とされる中西さんは当時、大阪女子大学長で、大阪新聞の1面にコラムを連載していた。

 ところで、水府と聞いてピンとこなくても、寿屋(現サントリーホールディングス)やグリコ(同江崎グリコ)のコピーライターとして活躍したと聞けば才のほどは明らかだろう。例えば、有名な川柳はこれ。

 〈恋せよとうす桃いろの花がさく〉

 田辺さんは「水府の川柳はみな品(しな)たかく、それに、ふんわりした手ざわり、加えて大阪弁でいう、〈はんなり〉した花やぎがある」と評した。

 ちなみに最も好きな川柳はと問われ、挙げたのがこちら。

 〈泣いてゐるうしろ通ればあけてくれ〉

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