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【朝晴れエッセー】尼僧との再会・6月15日

 私は、父親の仕事の関係で、中学校卒業まで15年間金沢市で過ごした。私の小学校時代は、一般的な家庭では、親からおやつをもらうことはほとんどなく、自分で桑の実、槙の実、野イチゴ、ギンナンの実、くるみ、いちぢく、ザクロ、アケビ、ビワなどを探し求めて空腹を満たしていた。

 小学校6年生のとき、下級生を連れて、近くの尼寺の境内にあるビワを取りに行った。私がビワの木に登り、実を枝から取り、木の下にいる下級生に投げ落としていた。そんなことを何回かしたとき、若くあごに大きなホクロのある尼僧が怖い顔をして見上げて、木から下りるように言った。そして、了解もなくビワの実を取ることは泥棒であるなど、徹底的に怒られた。

 2、3日後、あの若い尼僧が、私の家に訪ねてきた。私はビワを盗んだことを母親に言いにきたと思い、物陰から様子をうかがっていた。尼僧は、そのことには一切触れずに、これを子供さんに食べさせてくださいと言ってビワを置いて帰っていった。

 喜寿を迎え、年のせいか15年間過ごした金沢市が無性に懐かしく、2泊3日の日程で金沢市を訪れた。卒業した小学校、中学校、過ごした家、遊びの場である静明寺の境内、浅野川、卯辰山などを見て回った。

 最後にふと、尼寺のビワの木を見たくなり探したが、枯れたのか、見当たらなかった。近くで草刈りをしている年老いた尼僧がいたのでビワの木のことを聞こうと声をかけた。尼僧と顔を合わせたとき、私は「あっ」と声を上げた。その尼僧のあごのしわの中に大きなホクロがあった。

硲 重治 77 和歌山県橋本市

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