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【宮家邦彦のWorld Watch】「1989年5月35日」を想う

 しかし、中国経済は早晩下り坂になる。冒頭の中国発展モデル類型に戻ろう。第3は経済停滞・民主化促進モデルだ。経済的苦境に陥った庶民が民主化を求めると考えるのだが、果たしてそうなのか。経済困難が増せば増すほど、中国の政治指導部は社会的締め付けを強め、独裁制は一層強化されるかもしれない。これら全ては中国の一般庶民がどれだけ従順で忍耐強いかにかかっている。今の筆者にはこの問いに答える自信がない。

 最後に身も蓋もない話をもう一言。30年前のあの事件は一体何だったのか。学生たちの一部は共産党内に残り、いずれは内部から改革を進めてくれるのではないか。筆者がそう期待した時期も90年代にはあったが、2000年に北京に赴任し、それが希望的観測であることを痛感させられた。では30年前、仮にトウ主席が解放軍を投入しなければ中国共産党体制は崩壊したのだろうか。その可能性はあっただろう。しかし、それで中国の民主化が進むとはかぎらない。今のプーチン政権のロシアを見れば元共産主義独裁国家の民主化がいかに困難であるかは一目瞭然だろう。

 逆に言えば、30年前北京で何が起きようとも、中国はそう簡単には変わらなかったのかもしれない。でも、それでは悲しすぎないか。あの学生たちを無駄死にさせてはならない。30年前の勇敢な彼らの言動も中国現代史にしっかりと記録されるべきだと思うからだ。

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【プロフィル】宮家邦彦

 みやけ・くにひこ 昭和28(1953)年、神奈川県出身。栄光学園高、東京大学法学部卒。53年外務省入省。中東1課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを歴任し、平成17年退官。第1次安倍内閣では首相公邸連絡調整官を務めた。現在、立命館大学客員教授、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。

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